WWEの舞台裏で活躍する全身タトゥーのコメンテーター、波乱万丈の歩み

引退から約3年半が経った。2018年1月、フィラデルフィアのウェルズ・ファーゴ・センターで開催された『ロイヤル・ランブル』の会場に、ラベンダー色のボタンダウンシャツに身を包み、赤と黒のスタイリッシュなスーツを着たグレイブスはいた。ドレスアップしたグレイブスの現在の定位置はアナウンサー席だ。

その突き刺さるようなパンチの効いた語りは、サーシャ・バンクスの悪友ぶりを暴露するにせよ、解説席に座るコメンテーターのバイロン・サクストンを黙らせる新たなやり口を見出すにせよ、WWEが標榜するスポーツエンタテインメント界のかつての最高の解説者たち、ジェシー・“ザ・ボディ”・ベンチュラやボビー・“ザ・ブレイン”・ヒーナンを彷彿とさせる。

日曜夜の『ロイヤル・ランブル』の翌日には、月曜夜のRAW、火曜夜のスマックダウン・ライブと続く。いずれの番組にも登場するコメンテーターはグレイブスだけだ。また、それ以外にもFacebookでライブ中継する、男女混合タッグによるトーナメント、ミックスド・マッチ・チャレンジの収録をし、アトランタでは3日間で6時間分のビデオゲームの音声収録がある。


左から実況のブッカー・T、マイケル・コール、コリー・グレイブス(Photo by WWE)

オンエアではノンストップでまくしたてる彼がコネチカットの我が家に帰ると、子どもたちと遊び、野球観戦をして、時間を惜しんでは妻と連れ立ってニューヨークで夜を過ごしてタトゥーを増して帰ってくる。でも日曜日にはまた振り出しに戻ってRAWからスマックダウンに至る強行軍だ。

RAWのアナウンサーチームに2016年7月に参加して以来、頑固なプロレス者たちもグレイブスを待望されていた若き才能であり、WWEの伝統を継ぐコメンテーターとして喝采してきた。フロリダでのアナウンサー修業は決してたやすくはなかったが、グレイブスは期待を上回る実績を出している。1日4時間の生放送を1週間に何度もこなしているのだ。

彼は自分に厳しくあり続けている。というのも彼はこの転身を言い渡されたときの感覚をはっきり覚えているのだ。自分への称賛は謙虚に受け止めているが、ベンチュラやヒーナンにはまだ遠く及ばないと自覚している。「彼らは神話的な存在なんだ」とグレイブスは語る。「彼らと同じ空気を吸えるのはうれしいけど、自分がそういう人間になれるかどうか、一生無理だろうね」

コリー・グレイブスは今ではWWEの人気番組の主力解説者で、WWEの新たな声ともいえる存在だ。しかし彼自身は未だに落ち着かないようだ。「なんか奇妙なんだ」と彼は語る。「この業界の動きは激しくてとてもじっとはしていられない。戸惑うことも多いよ」と。

Translated by LIVING YELLOW

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