テイラー・スウィフトのチケット販売戦略:価格変動型セールスは革新的か?需要低下か?

この方式が採用されている現状を鑑みて、コンサート・プロモーターたちは2018年における“成功するコンサートの形”を考え直す必要に駆られている。2015年のスウィフトの1989ツアーはほぼ瞬時にソールドアウトになったが、レピュテーション・ツアーでは空席が目立っている。あるベテラン・プロモーターが「セールスは惨憺たるものだ。あれはスタジアム・ツアーのチケット価格として設定された最悪の価格帯であり、最悪の弾力価格だよ」と打ち明けた。しかし、スウィフトは長い目で見ていると語る者もいる。コンサート業界紙Pollstarの編集長ゲイリー・ボンジョヴァンニは「チケットが完売していない点を強調しないで欲しい」と述べた。また、コンサート業界のエキスパートは「業界は新たな信念を取り入れようとしている。つまり、あっという間に完売するチケットの値段設定は適正ではないという考え方だ」と言う(この件に関してスウィフトの代理人はコメントを拒否した)。

とはいえ、このシステムはファンに混乱を引き起こすものであることは間違いない。ダイナミック・プライシング方式に加え、インタラクティヴ・マップ上で座席を販売しているからである。マップ上の座席は色分けされており、イエローがVIP用の座席(500〜900ドル/ 53,000〜96,000円)、ピンクが承認されたファンの転売用の座席(これで転売価格の差額をリストアップできる)、ブルーが額面価格(50〜450ドル/5,300〜48,000円)の座席だ。「これは少し複雑だ」とロサンゼルスのネダーランダー・コンサーツのCEOアレックス・ホッジスが言う。チケット価格が桁外れに高額になればファンは「買えないと思って諦めるだろう」と。

一方で、現在のコンサート業界全体が様変わりしている最中であり、このやり方は利益を確保するために必要な対策だと考えるエキスパートもいる。ある関係者は「航空会社がチケットを一気に完売して全席を埋めたいと考えるのか、700ドルという定価を固辞して1席ずつ埋まっていくのを待ちたいか、と考えるとわかると思う。コンサートチケットもそれと同じ状況だ」と述べた。また「コンサートチケットは、ホテル、航空券、レンタカーと同じになったってこと。これは文化的な変化であり、転売業者を受け入れたってことだ」と言うエキスパートもいる。

Translated by Miki Nakayama

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