レニー・クラヴィッツが30年のキャリアで初めて直面したスランプの恐怖

レニー・クラヴィッツが新作『Raise Vibration』について語った(Photo by Mathieu Bitton)

レニー・クラヴィッツが新作『Raise Vibration』についてローリングストーン誌に語った。「一切アイデアが浮かばないという状況は初めてだった」と自らのスランプを振り返り、どのようにそこから脱却して作品を完成させたかを語った。

3年前にワールド・ツアーを終えた後、レニー・クラヴィッツはそれまで一度も経験したことのない状態にいる自分に気付いた。それは確信が一切生まれない恐怖の世界。「自分の音楽の将来像がまったく思い浮かばなかったんだ」と、クラヴィッツがローリングストーン誌に語った。「30年も音楽をやってきたのに、自分の中の音楽を感じられなかった。一切アイデアが浮かばないという状況は初めてだった。そんな自分が怖くなったよ。ほんと、突然そうなるから」と。

クラヴィッツの周囲は、ヒット請負人として有名なプロデューサーやソングライターとのコラボレーションを提案して、彼を蘇らせようとした。しかし、クラヴィッツはそれも嫌がった。「そういうコラボレーションでうまく行った試しがなかった。トレンドを追ったり、人の期待に迎合した音楽をやったりするのは違うんだよ。俺は自分の中から自然に生まれてくる音楽を作り続けてきた。次に何をやる?ってなって、トラップでもやるか?と思ったけど、興味はあっても、それじゃあ俺の音楽じゃなくなるからさ」と続けた。

クラヴィットはバハマにある自宅に身を隠した。そこで気を落ち着けて、自分の考えを熟考して、併設してある自宅スタジオには決して足を向けなかった。「スタジオの存在を頭の片隅で意識していたけど、行かないって決めた」と、当時を思い出しながらクラヴィッツが説明してくれた。そんな生活をしていたある夜、朝方4時に目覚めた彼の頭の中で曲が鳴っていた。インスピレーションを感じたクラヴィッツは、すぐさま起き出し、スタジオに入り、その曲のラフ・バージョンを録音。その夜以来、同じ現象が毎晩続いたのである。頭の中で曲が鳴っている状態で目覚め、すぐさま紙に書き留めるか、スタジオに入って録音するか、ときにはベッドの横に置いてあるスマートフォンにメロディをハミングして大急ぎで録音した、消えてしまう前に....。

そんなふうに、クラヴィッツの11枚目のスタジオ・アルバムの土台が出来上がっていった。「俺は確信したんだ、“これだ!”ってね。俺が待ち望んだものがこれだって。その状態になったら、水門が開いて、音楽が洪水にように押し寄せてきた。レコードの完成形すら夢に出てきたよ」と、そのときの状況を語った。

Translated by Miki Nakayama

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