名声の「負の側面」を描いたJ・コール、ジャック・ホワイトが見出した新鋭など、ストリーミングで楽しむ10作品

6:オールド・クロウ・メディスン・ショー『Volunteer』
ストリングス・バンドの8枚目のフルアルバムは、プロデューサー、デイヴ・コブのもと、伝説のRCAのA Studioで録音された。このバンドを始めたケッチュ・セカーがローリングストーン誌にこう説明した。「感動的な瞬間に注目するのはありがちだ。マール・ハガードが耳元でささやくとか、エミールー・ハリスに荷物を持ってくれと頼まれるとか、ね。そういうときは、それ以外の人や物事が自分の横を通り過ぎていても見逃しているんだよ。でも音楽という人生の中で起きる魂の旅路では、そういう見逃したことが後で戻ってきて、人生の決断をもう一度迫るんだ」と。
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7:スリープ『The Sciences』
解散前にリリースされたストーナーメタルの福音書ともいえる前作『Jerusalem』からほぼ20年の時が経った。2009年の再結成後、初のアルバム。「Marijuanaut’s Theme」の水キセルのようなフラッター、10分という尺長の「Giza Butler」(「マリファナが彼の力であり、彼の救いだ」と歌う)。そしていつも通り、マット・パイクの破壊的なギター・トーンが「The Sciences」のノイズだけのイントロからエンディング曲「The Botanist」のアシッド・ブルース系ソロまで響き渡っている。
評:コーリー・グロウ
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8:オウテカ『NTS Session 3』
常に聞く者の脳を圧倒するエレクトロニック・ミュージック界の奇才デュオが再びリリースした1時間59分のプログラミング・ジャム。このセッションで披露されるエレクトロは、足首を捻挫したときのようなガタガタいう足取り(「Clustro Casual」「Flh」)や、花火の如く弾け飛ぶドラムレスな盛り上がり(「Acid Mwan Idle」)など。
評:クリストファー・R・ワイガーテン
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9:メルヴィンズ『ピンカス・アボーション・テクニシャン』
「今の俺がレッドクロスのベーシストとバットホール・サーファーズのベーシストと一緒にバンドをやっているって、考えるだけでも奇妙だよ」と、メルヴィンズのリーダー、バズ・オズボーンがRevolver誌に語った。「1986年の時点で、俺が将来こんなふうになるって誰かに言われても、絶対に信じなかったな」と。メルヴィンに、パワーポップのレッドクロスからスティーヴ・マクドナルドが、アート・パンクのバットホール・サーファーズからジェフ・ピンカスが流れ着いて作られた今作は、彼らが反発するどころか、バンドと馴染んでいるのが分かるサウンドになっている。オープニング曲は1969年のジェイムス・ギャングのグルーヴィな曲「Stop and the Surfers」と1985年の「Moving to Florida」をジョイントさせたカバー曲だ。収録されている5曲のオリジナル曲のキテレツさが印象的だが、聴きどころはプッシュ・プル・ポーズでアレンジされたビートルズの「抱きしめたい」のオルタナティヴ・メタル・カバーだろう。
評:クリストファー・R・ワインガーテン
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10:ジェニー・ウィルソン『Exorcism』
2005年のソロ・デビュー以来、スウェーデン出身のシンセ・サイエンティストのジェニー・ウィルソンは、エレクトロの実験と鋭い視点からの観察を組み合わせた切れ味の鋭い作品をリリースしてきた。彼女にとって4枚目となる今作では、性的暴力の後に起きる強烈な出来事や瞬間を切り取ったものだ。オープニング曲「Rapin’」では、自身の経験を扇情的な歌詞で、出来事に対するショックと反抗を歌いながら、世界の終わり的なシンセ・サウンドで表している。「It Hurts」では、ウィルソンの嘆きがポスト・ディスコのグルーヴの上で優雅に舞っているが、それが彼女の苦悩とトラウマからの解放への憧れに対する警鐘へと変わる。ウィルソンの鋭いポエトリーは、暴行の後、近親者も赤の他人も同じように自分から離れていく事実を一つひとつ描写し、曲の不安定さが恐怖心を醸し出す。この作品は内容的に痛みを感じる部分が多いが、ウィルソンの才能と自分の内側をさらけ出すという強い意志が奏功し、生命力のある作品に仕上がっている。
評:モーラ・ジョンストン
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Translated by Miki Nakayama

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