ONE OK ROCKが2018年に体現した過去と今と未来 ワールドツアー最終日・福岡公演ライブレポ

『Ambitions』の中でもロック・アンセム感の強い「I was King」では、“wow, wow”のコーラス部分とサビの“When I was king”の箇所でオーディエンスも歌う。シンプルな展開にもかかわらず、何度も繰り返し聴いて歌いたくなるような普遍的な魅力がある曲だ。ONE OK ROCKの曲をリードするのは「歌」だということが感じられるだけでなく、彼らがかつて聴いてきたであろうロック・バンドの姿も重なり、あらためてそのレベルの高さに圧倒されたのだった。

曲が終わり、Toruがギターを静かにかき鳴らしながら、TakaがMCで今回のワールドツアーの感想とONE OK ROCKの第二章について話をする。北米、南米、ヨーロッパ、アジア、いろんな景色がそこにはあったということ。13年間走りっぱなしで、自分たちがどんな位置にいて、どう見られているかは分からないということ。ただ、同じことをダラダラと続けるのではなく、自分たちは挑戦し続けていきたいということ。そして「挑戦し続けることがロックだし、それがONE OK ROCKだと思う。ONE OK ROCKは自分の人生。人生の行方をしかと見届けてもらいたい。僕たちはロック・バンドです。これからもよろしくお願いします」という言葉で締めくくった。


(Photo by Kazushi Hamano)

Toruのギターとともに“過ぎ去った嵐のあとの静けさに たたずんだ となりに君はもういない”というTakaの哀愁をたたえた歌が響き渡り、「Take what you want」が始まる。途中、長い静寂を挟むことで、ドラマティックな表情を帯びた4人の演奏。“Take what you want”の英語歌詞の流れるようなフロウ、余白の使い方で奥行きを見せるバンドの演奏。その余白を埋めるのはオーディエンスのシンガロングだ。Takaも「もっと!」「恥ずかしがんなよ!」と呼びかける。気づけば会場は熱狂とともに多幸感に包まれていた。

「行くぞ福岡!」という掛け声とともに始まったのは「The Beginning」。イントロのギターの刻みとヴォーカルのゾクゾクするようなメロディ。シンコペーションを効かせたリズムで疾走していくこの曲は、ONE OK ROCK流ギターロックの一つの到達点と言っていいだろう。Taka、Toru、Ryotaは花道を歩いてセンターステージでプレイしているが、巨大なドームの中なのにライブハウスのような親密さが会場に漂っている。メンバー間の距離、メンバーと客席の距離を感じさせない一体感が常にあるからだろう。“握りしめた 失わぬようにと”“手を広げればこぼれ落ちそうで”といった日本語の歌詞と、オーディエンスとの掛け合いになる“So stand up, stand up”“I wanna wake up, wake up”“Never give up”といった英語歌詞のハイブリッド感が気持ちいい一曲だ。

クライマックスに向けて加速するバンドは、「Mighty Long Fall」を披露。ベースとドラムが強靭なリズムを生み出し、その上でギターが多彩なアプローチを繰り広げる。Takaの「もっとこいや!」という一言も熱を帯び、オーディエンスを巻き込みながら終盤のシンガロングで興奮のるつぼと化す。音もとにかくデカい。そして最後は音圧たっぷりのバスドラとともにヘッドバンギングを促したのだった。

「この景色を見せたい人がいて、そのために作った曲です。悲しい歌かもしれないけど、今はもう悲しくありません。今日は笑顔で歌います」というTakaの言葉とともに、本編最後を締めくくったのは「Nobody’s Home」。その言葉通り、本来は悲しい曲かもしれないが、今のモードで演奏することでまた違った意味を曲から受け取ることができるだろう。Toruのメロディアスなギター、Ryotaのメロディアスなベース、Tomoyaの躍動するドラムが、Takaの想いを大きく包み込む。

激しさだけでなく、静けさも彼らの音楽を語るために大切な要素であり、怒りも悲しみも含め、Takaの内なる感情が言葉になり、ライブという空間で皆がONE OK ROCKの曲を共有する。ステージに立つ者、ライブに参加する者の双方にとって幸せな時間は瞬く間に過ぎ、本編18曲は終了した。

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