常に変化を追い求めるフォール・アウト・ボーイ、キャリア初の武道館公演を振り返る

4月26日に開催された日本武道館公演で熱唱する、フォール・アウト・ボーイのパトリック・スタンプ(Photo by Sotaro Goto)

今年1月にリリースした『マ ニ ア』で3作連続の全米チャート1位に輝いたフォール・アウト・ボーイが、東名阪を回るジャパン・ツアーを実施。今回は4月26日に開催された日本武道館公演のレポートをお届けする。

懐の深さも垣間見えた、全力投球のパフォーマンス

初来日から14年、単独来日公演としてはキャリア史上最大規模となる日本武道館公演を行なったフォール・アウト・ボーイ。最新作『マ ニ ア』をひっさげて立ったそのステージは、今なおキャリア最高を更新し続けるバンドの“今”が感じられる素晴らしい内容だった。

FOB直撃世代でもある日本の若手、MY FIRST STORYの熱演で暖まった会場にバンドが登場。炎の演出を用いた1曲目「ザ・フェニックス」から、バンドも観客もエンジン全開で飛ばしていく。ステージ上にはアンプもなくガランとしているように見えたが、背後の大型スクリーンに次々映される映像と、曲のスケール感のお陰で物足りなさを感じることは一切ない。「インモータルズ」では映画『ベイマックス』の映像がバックに流され、今ツアーのイメージ・カラーである紫色のテープが宙を舞った。

「セイヴ・ロックンロール」ではピートが「みんな携帯電話のライトをつけて」と呼びかけ、場内に無数の白い光が揺れる。そんな中パトリックがピアノを弾きながら歌い始めると、ジョーが絶妙なコーラスでそれに寄り添い、早くもクライマックス感が漂った。

『マ ニ ア』からの先行トラックとして公開されファンを驚かせた「ヤング・アンド・メナス」はパトリックがピアノと共に一人で披露。あのエフェクトとカットアップを多用した曲を一体ライヴでどう再現するのかと思ったら、なんとパトリックは人力で歌いきってしまった。ソウルやジャズを愛好する彼のこと、スキャット唱法もお手の物というわけだ。他にもアンディのドラム・ソロ・パフォーマンスがケンドリック・ラマー「ハンブル」のサンプリングで始まり、ブラー「ソング2」で終わったのは、FOBの音楽的懐の深さが垣間見えた瞬間だった。

さてお次は「ダンス、ダンス」……と思ったらステージ上にピートの姿が見当たらない。どこに行ったのかと思ったら、一人で1階アリーナ後方の特設ミニステージに移動してプレイしていた。後方の客席への出張サービスはここ数年、全米ツアーでもほぼ欠かさずやっている演出だ。

そして今回のツアーで注目を集めているのが、「サンクス・フォー・ザ・メモリーズ」でスクリーンにご当地ネタを盛り込んだ看板を映すこと。前日の大阪ではダルビッシュ有の名前が出たそうだが(彼は大阪出身で、現在の所属チームはバンドのホームタウン球団であるシカゴ・カブスだから?)、武道館では「LAND OF GIANTS MATCH: GIANT BABA / ANDRE THE GIANT FOREVER」の文字が躍った。メンバーの誰かがプロレス・ファンなのだろうか。さらに今回は『マ ニ ア』のイメージ・キャラクターのアルパカも連れてきたりと、大会場でファンを楽しませるための準備には余念がない。

Fall Out Boy(Photo by Sotaro Goto)

大人気の定番曲「アームズ・レース ~フォール・アウト・ボーイの頂上作戦」ではハンドマイクを掴んだパトリックが「お元気ですかー! 一緒に歌ってください!」と日本語でシャウト。武道館という大舞台に加え翌日が休演日という安心感もあったのか、この日のパトリックはいつも以上に出し惜しみのない全力で歌っていたように思う。ツアー日程が詰まっていて前後の公演日に間隔がない日だと、翌日の喉のコンディションを考慮してフルパワーで歌うことを避けるアーティストは多い。筆者は2013年〜2015年の間に計4回、FOBのツアーをアメリカ南部で観る機会があったのだが、やはりツアー中盤の公演地ゆえにあくまでセーブした歌い方だったのだろうなと、武道館での120%のパフォーマンスを見て今更気付いた。もちろんセーブした状態であっても彼が実力のあるヴォーカリストだということは変わりはないのだが。

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