浅井健一インタビュー「右や左ではなく、俺は真ん中を目指している」

世の中が凄い状態になっているからこそ、ハッとするような物語を作りたい

―今回、151編の詩が収録されていますが、選ぶのは大変だったのでは?

浅井:スタッフサイド4人ぐらいと選んでったかな。大変だったよ。並びとかもね。

―ああ、並びか。年代順に並んでいるわけではないですもんね。

浅井:そう、トータル的にね。

―並びにはどんな意図が?

浅井:もう雰囲気だわ。流れ。感性だよ。

―ソロ名義のものはもちろん、BLANKEY JET CITY、SHERBETS、AJICO時代の詩も収録されていますが、BLANKEY JET CITYでは歌詞は、浅井さんが任されていたんですか? 

浅井:詩は俺の役割だったね。BLANKEYの時はまだ作り始めて、(アルバムが)2枚目、3枚目ってなってくるじゃん。それから俺、物凄い数の曲を作ったけど、その時はまだ、そんなに曲が作れる人間だとは思ってないからさ。せいぜい20曲ぐらい作っただけで。だから、詩を書くことがどえりゃあすげえ大変で、偶然の結果の産物だと思っていたから、新しいアルバムを作るとき、詩を書くってことに物凄い構えていたんだよね。また、大変な日が続くなみたいな。そういう状況の中で、何月何日までに詩を全部上げなきゃいけないんだから、けっこう大変だったね。その重圧から、呑みに行くと、たまにハジけちゃってたんだな。ベロベロに酔っ払って。前歯折ってさ、鼻も折れてさ(笑)。そんな日々が続いてたから大変だったよ。

―今も産みの苦しみはあると思うんですけど、その頃ほど重圧はないですか?

浅井:あるんかな? 書けなくなったらどうしようっていうのは毎年あるよ。でも、なんだろ、生きている以上、人間はたぶん、いろいろな考えが出てくるから、絵でも文章でも無限に出てくるような気がしてるかな、今は。言うことが尽きるんじゃなくてね。もちろん昔から、同じようなことばかり言っているんだけど、表し方がいろいろあるから。言ってることはひとつかもしれないけど、その表し方は無限にあると思ってるけどね。

浅井健一
Photo by Kana Tarumi

―『宇宙の匂い』には、ショート・ストーリーも収録されていますが。

浅井:ロング・ストーリーにしたいと思ってたけど、あれ以上続かんかったね。

―小説を書きたいってことなんでしょうか?

浅井:なんだろう。人がはっと気づくような、そういう物語を作りたいとは思うんだけどね。こんだけ世の中が面白くなってきていると言うか、凄い状態になってきてるじゃん。最近、人類のいろいろな本を読んどるんだけど、人間って昔から繰り返しばっかりやってて、そのつど、大量殺戮があって、それが止まったためしがない。今、うちらたまたま平和だけど、絶対、同じことを、人間である以上、繰り返すなっていう感じが自分の中で見えとって。だから、そうならないように、みんなが気づくような、凄い大事な何かがあるような気がしとって、それを短いストーリー――絵本でも何でもいいから、表せたらいいかなと思っているんだけど、そんなの難しいよなぁ。

―世の中が面白くなってきたというのは?

浅井:世の中って常に面白いと思うんだけど、インターネットができて、社会を変えたよね。自分の意見を表に出そうにも出せなかった人たちが匿名で、いろいろなことを言っちゃって、それが世の中をちょっと動かしたりするじゃん。ネットができる前は、そんなことありえなかった。ネットの出現が人間の社会の在り方を、いろいろ変化させていると思う。

―そうですね。

浅井:ネットと言えば……これはRolling Stoneだから話すんだけどさ。最近、俺、右翼と言われたりするんだけど、一応言っとくと、自分では、俺、右翼じゃないんだわ。真ん中のつもりなんだよ。絶対、真ん中じゃないとダメだと思うんだよね。左翼も右翼も、偏るのは絶対よくないと思って、左翼は左翼で怖いし、右翼は右翼で怖いし、俺は絶対、真ん中で常にいないと、国はダメだと思っとって。でも、なんで俺が右翼って言われるのかって言うと、たぶん、日本自体が今、凄い左に寄っていると思うんだわ。その状態から言うと、俺が言っている真ん中は、どうしても右に見えるじゃん。だから、俺のことを右翼と勘違いしてる人もいるんだけど、俺は決して右を目指しているんじゃなくて、真ん中を目指しているっていうのは書いておいてほしいんだよね。

―わかりました。

浅井:話がずれたけど、この流れで行くと、また戦争が起こるから、そうならないように大事な何かを表せるような、子供も理解できるような本をいつか書きたいと思ってるけどね。

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