ローリングストーン誌が選ぶ「2017年ワースト・ムービー」

ローリングストーン誌が選ぶ「2017年度ワースト・ムービー」

ゴールデンウィーク最終日、せっかくの休みを面白くない映画で締めくくりたくない読者のみなさんへ。不相応なビッグ・ヒット作品から支離滅裂なインディー作品、見当違いの続編や常連のマイケル・ベイ作品まで、米ローリングストーン誌の名物映画評論家・ピーター・トラヴァーズが選ぶ、2017年の最悪な映画を10本紹介しよう。

トランプの愚かなツイート連射を真似るかのように、2017年は質の悪い映画が豊作だった。ハリウッドはいつから“いい”と“ひどい”の区別がつかなくなったのかと、我が目を疑うような映画作品が毎週必ず1〜3本は登場した。過去のテレビドラマに金脈を探ろうとしても、その結果が『ベイウォッチ』(劇場未公開)や『チップス 白バイ野郎ジョン&パンチ再起動!?』(劇場未公開)や『My Little Pony: The Movie(原題)』(未公開)だったら、探す場所を間違えている。5匹目のドジョウである『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』がヒットすると考えたヤツはどんな類いの天才なのだろうか? ヴィン・ディーゼルに『トリプルX 再起動』を観たいと言ったヤツは誰だ?

ひどい作品はもっとあった。嘘じゃない、本当にもっとあったんだから。ガイ・リッチー監督は『円卓の騎士』が『キング・アーサー』の一部だと証明した。また、『ジオストーム』、『ラフ・ナイト 市場最悪!?の独身さよならパーティー』(劇場未公開)、『The Snowman(原題)』(※日本公開未定)、『ザ・サークル』、『Tulip Fever(原題)』(※日本公開未定)を自腹で観に行った人、お気は確かですか? 『キング・コング 髑髏島の巨人』はキング・コングのエピソード1だ。『フラットライナーズ』はつまらないリメイク。『レゴ®ニンジャゴー ザ・ムービー』(劇場未公開)はアホらしい続編。話のまとまらない『ジャスティス・リーグ』は意味不明。製作費1億5,000万ドル(約164億円)をかけたマット・デイモン主演の米中合作『グレートウォール』はグレートとは言い難い。両国とも、かつては量産していた素晴らしい大作のノウハウをすっかり忘れてしまったようだ。

何よりも驚きなのは、前出の映画は今年の最悪シネマ・リストに1作も入っていないことだ。では2017年の最悪シネマ10本を発表しよう。このリストを見て涙してくれ。

10位 『絵文字の国のジーン』

絵文字のジーン(声:T・J・ミラー)が主人公のアニメーション茶番劇は、観客からも批評家からも総スカンをくらった。ジーンは一つのことだけでは生き残れないと思っている。うんちパパ(声:パトリック・スチュワート)、スマイラー(声:マーヤ・ルドルフ)、ハイタッチ(声:ジェームズ・コーデン)はそれでもいいが、ジーンは彩り、深み、多様さが必要なのだ。彩りも、深みも、多様さもないこの映画もジーンと同じ。映画地獄を表わす絵文字が必要だ。誰か作ってくれないか?

日本公開:終了 ※3月14日よりBlu-ray&DVD発売

9位 『サバービコン 仮面を被った街』

コーエン兄弟の脚本を基に、ジョージ・クルーニーが共同脚本と監督を務めたこの作品は、2017年で最も深い落胆の“ため息”をつかせる作品となった。これほど能力のある製作チームと、マット・デイモン、ジュリアン・ムーア、オスカー・アイザックという錚々たる一流俳優たちがタッグに組んだからには、観客の期待が膨らむのは当然のこと。しかし、1950年代の白人世帯が住む郊外のニュータウンを優しく皮肉る程度で終わってしまっている。白人のアメリカン・ドリームを邪魔する存在として、アフリカ系アメリカ人家族が登場した部分で観客のイライラが爆発し始めるのだが、監督のクルーニーは至って真面目にこのわき筋を加えているのだ。この作品は1957年にペンシルベニア州レビットタウンという白人だけの区画に、黒人家族が引っ越してきたことがきっかけで起きた暴動をモチーフにしている。全体的なトーンも不快だ。それに、風刺で説教するというのはいかがなものか。ここで弔いの鐘を鳴らしておこう。

日本公開:5月4日より全国にて公開中

Translated by Miki Nakayama

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