アークティック・モンキーズ最新インタビュー:未だ謎多きニューアルバムの全容

5月11日にニューアルバムを発表するアークティック・モンキーズ(Photo by Zackery Michael)

アークティック・モンキーズが5年ぶりの新作『トランクイリティ・ベース・ホテル・アンド・カジノ』を5月11日(金)にリリースする。ここではトレードマークのギターリフを放棄し、壮大でSF感漂うサウンドを展開。先行シングルやMVが一切公開されず、未だ謎多きニューアルバムの制作背景をアレックス・ターナーとメンバーたちが明かす。

ジャズと鍵盤がもたらしたインスピレーション

アークティック・モンキーズの5年ぶりとなる新作には、開放感と閉塞感が同居している。そのユニークな世界観は、丘の上に建てられた一軒家の小さな一室に閉じこもり、自身の空想の世界を具現化すべく、半狂乱の状態でピアノと格闘し続けた男の心象風景そのものなのだろう。その人物アレックス・ターナー曰く、新作『トランクイリティ・ベース・ホテル・アンド・カジノ』は、苦悩の日々の果てに生まれたという。5月11日の発売日を数週間後に控えた4月中旬、モンキーズのフロントマンである彼は、居を構えるハリウッドヒルズの麓にあるカフェで朝食をとっていた。10時前という早い時間にもかかわらず、彼はサファリポケットとフレアのパンツが印象的なヴィンテージのスーツに身を包んでいる。「クリスチャン・ディオールさ」彼はそう話す。

2016年、ターナーは自宅のホームスタジオで新作の制作に着手した。その中心となったのは、誕生日にマネージャーから贈られたSteinway Vertegrandのピアノだったという。特定のスタイルに縛られなかったジョン・レノンやデヴィッド・ボウイを崇める彼は、うねるようなギターリフとヘヴィなグルーヴに満ち、プラチナディスクを記録した前作『AM』とはまるで異なるサウンドを求めていた。それまで鍵盤で曲を書いたことがなかった彼は、そのピアノが自分の中に眠る何かを呼び起こしてくれるのではないかと考え、その目論見は見事に功を奏した。特に意識することなく押さえた鍵盤の響きやコード進行は、どれもジャズを思わせるものだったという。

「ギターばかり弾いてた俺にとって、ラウンジーなその響きはすごく新鮮だった」。彼はそう話す。「子どもの頃に、父親が自宅のピアノでよく弾いてた曲を思い出したよ」。他にもセルジュ・ゲンスブールの「メロディ・ネルソンの物語」、ディオンの「ボーン・トゥ・ビー・ウィズ・ユー」、そしてフランソワ・ド・ルーベが書き下ろした、1967年公開のジャン=ピエール・メルヴィルによるポスト・ギャングスタ映画のクラシック「サムライ」のジャジーなサウンドトラックまで、そのインスピレーションは多岐に渡る。


アークティック・モンキーズが2009年に披露したディオン「Only You Know」のカヴァー・セッション

Translated by Masaaki Yoshida

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