DJプレミアが語る、キャリアを代表する15曲

ディアンジェロ『デヴィルズ・パイ』(1998年)

このビートはキャニバスに却下されたんだ。やつの態度があまりに気に食わなかったから、俺は前もって受け取ってたギャラを全額返金した。俺にコンタクトしてきた時、やつは『ニガノメトリー』っていうタイトルの、いかついベースラインがリードする曲を作りたいって言ってた。(同曲のベースラインを口ずさみながら)あのベースラインが浮かんだ時、キャニバスにぴったりだと俺は思った。ところがやつは、(不機嫌さを露骨に示すトーンで)「俺のヴィジョンを全然理解できてねぇ」なんてぬかしやがった。さすがにあの時はカチンときたよ。俺は気難しいほうじゃないけど、あんな風に言われちゃさすがに黙ってられない。俺はMCAレコードにギャラを全額返金する際に、こういう内容の手紙を添えた。「俺たちはそりが合わなかった。残念だ」別に返金する必要はなかったんだけど、その方がスッキリするからな。やつのあの発言は今でもはっきり思えてるよ。

その直後に、デイアンジェロがいきなり俺のところに連絡してきてこう言ったんだ。「例の曲を聴かせてくれないか?今スタジオにいるんだけど、ちょっと来れないか?」俺はすぐ近所に住んでたからその足で向かったんだけど、その結果がこの曲さ。ビートを聴いて、彼はこう言ったんだ。「ワォ、これ最高じゃん。俺に歌わせてくれよ」

リンプ・ビズキット・フィーチャリング・メソッド・マン『N・2・ギャザー・ナウ』(1999年)

(リンプ・ビズキットの)フレッド(・ダースト)は大したMCじゃないけど、彼はこう言ったんだ。「俺はMCとしちゃお粗末かもしれない。でもあんたが力を貸してくれたら、俺はちょっとマシになるはずだし、曲をヒットさせられると思うんだ」俺がオファーを受けたのは、メソッド・マンが参加することになってたからだよ。メインのメロディはすでにDJリーサルが作ってたから、俺はベースとドラムを乗せた。フレッドをまともなラッパーに仕立て上げられたら、俺がディスられることはないだろうと思ったんだ。ファンから非難されるのはやっぱり避けたいからさ。でも曲の出来には満足してるよ。

(リンプ・ビズキットを)ヒップホップだとは思っちゃいないよ。単なるポップロックのグループさ。後にビジネス面のことで一悶着あったんだけど、リンプ・ビズキットのパジャマパーティーがプレイボーイ・マンションで開かれた時に、フレッドが俺をDJとして呼んでくれたんだ。ヒュー・ヘフナーがこう言ってたのを覚えてるよ。「パーティーを再開する前に一言だけ言わせてくれ。我々にセックスを与えたもうた神に感謝する」(笑)あの場に呼んでくれたフレッドには感謝しないとな。今は天国にいる俺の大切な仲間、HeadQCourterzは2度追い出されつつ、しれっと戻ってきてたっけな。

ロイス・ダ・ファイブ・ナイン『ヒップ・ホップ』(2004年)

これは元々メアリー・J・ブライジの曲のリミックスになるはずだった。彼女の声にバッチリだと思ってたんだけど、残念ながら締め切りに間に合わなかったんだ。そんな時にロイスが電話してきてこう言った。「今すぐトラックが必要なんだけど、何かないか?」それでこのビートを送ると、やつがヴォーカルトラックを送り返してきた。でもアルバムを完成させる前に、やつが1年間ムショに入ることになったせいで、参加者たちが次々に手を引いてった。未完成のままにしてくのは俺としても不本意だったから、出所してきたやつに俺はこう言ったんだ。「一緒に完成させようぜ」

クリスティーナ・アギレラ『エイント・ノー・アザー・マン』(2006年)

彼女の元夫のジョーダン(・ブラットマン)は大のヒップホップ好きなんだ。彼を通じて俺の曲を耳にした彼女は、俺のスタイルが気に入ったらしかった。当初俺が手がけるのは1曲だけの予定で、とりあえず好きにやらせてもらうことになった。それで作ったのが『バック・イン・ザ・デイ』だったんだけど、彼女のイメージにぴったりだったんだ。これで片付きそうだと思ったら、彼女が「他にも作ってみない?」って提案してきた。それで『スティル・ダーティー』と『サンキュー』を作った。その頃からイントロやプレコーラスについて彼女から指示が出るようになって、ある日「しばらく来れないから、次に会う時までに仕上げておいてね」なんてサラっと言われたんだ(笑)

この曲のブレイクを作ってた時に、側で聞いてた彼女が食いついてきた。「今のヤバくない?シングルはこれに決まりね。ブレイクダウンを入れられる?(ホーンとドラムパートの真似をして)そうそう」それから彼女は(ソングライターの)カーラ(・ディオガルディ)と別のスタジオに入ってって、出てくると一言こう言った。「じゃあ録りましょ」ポップスターと仕事をすることに抵抗はないんだ、自分のスタイルをちゃんと残せる自信があるからね。全然オファーは来ないけどな。俺が彼女と仕事をしてることが広まった時は、ファンからも「プリームらしくない」なんて言われたよ。でもこの曲が出てからは、誰もそんなことを言わなくなったね。

Translated by Masaaki Yoshida

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