ローリングストーン誌が選ぶ「2017年ホラームービー・ベスト10」

ローリングストーン誌が選ぶ「2017年 ホラームービ・ベスト10」

フランスの人肉モノからオーストラリアのシリアルキラー、『スプリット』から『ゲット・アウト』まで、昨年アメリカで公開された作品の中で、ローリングストーン誌編集部がオススメする最恐&最高傑作ホラー10作品を一挙紹介。

昨年1年間で公開されたホラー映画の中で、家の外に潜む恐怖やツイッターに毎日上がるニュースに対抗できるほど、恐ろしいものはあっただろうか? 悪夢という点で言えば、2017年は悪夢が現実になったかのようだった。怪物やプレデターが次々と現れ、目が覚める兆しもまったく見られない。待ちに待ったスティーヴン・キングの『IT』を見に劇場へ足を運べば、イカれたピエロが「お前たちの大事な者をみな奪ってやる」と無力な犠牲者たちを脅している間、CNNにチャンネルを合わせれば、まったく同じことが現実として起きている。まさにそんな1年だった。

だが、もしホラー映画が一種のガス抜きになるのであれば――つまり、日ごろ抱えている恐怖や懸念を追い払う場所なのだとしたら、2017年はホラー映画がもっとも必要とされた1年だった。邪悪なものへの愛ゆえに、実に多くのホラー映画が生まれた。社会を反映したもの(批評家の間でも、興行面でも成功を収めた『ゲット・アウト』)、センセーショナルなサバイバルもの、非常によくできたシリーズものの続編(根強い人気の死霊シリーズ最新作『アナベル 死霊人形の誕生』)など、実に様々。その一方で、ジグソーやレザーフェイスらがスラッシャー映画の殿堂入りを果たした。ゴースト系や流血祭り、ゆっくりじわじわ怖がらせて突然わっと驚かせる王道系、シリアルキラー系、魂を奪うパラノーマル系。ホラーの大御所は得意技を繰り出し、若手は新たな可能性を切り拓く――さながら、ホラー映画の盛り合わせといったところだ。

もちろん、がっかりさせられた作品もあった。スリルと恐怖をたっぷり期待していたユニバーサルの『ダーク・ユニバース』は冒頭からいただけなかったし、『バイバイマン』については言わぬが花(『リング/リバース』『キュア~禁断の隔離病棟』も同様)。だが同時に、ホラー偏差値をやすやすとクリアした秀作も多かった。それでは、我々編集部が選んだ2017年のホラームービーBest 10を発表しよう!

10位:『マザー!』

インターネットよ、かかってきなさい。ダレン・アロノフスキー監督による聖書を下敷きにした難解な絶叫ムービーは、いかようにも表現できる。ポランスキー風のホームドラマ・スリラー、地球創世記、環境破壊から夫婦崩壊にいたるまであらゆることを仄めかす大がかりなメタファー、一味違うスター俳優の役どころ・・・どれも正しい。だが、女性(ジェニファー・ローレンス)と彼女の夫(ハビエル・バルデム)、そして現実的にも比喩的にも崩壊していく世界を描いた物語の中核に巣くっているのは、やはりホラーなのだ。ホラーというジャンルの手法、常識、美学を拝借して、壮大かつ私的な悪夢を作り上げた。「理解できましたか?」と言わんばかりの上から目線が鼻につくと感じるかどうかは、人それぞれ。だが、心をかき乱す原始的なものを上手く利用して観客を震え上がらせるという意味では、オランダの画家ボスのグロテスクな絵画に命を吹き込もうというアロノフスキー監督の意図は(とくに映画の後半3分の2以降)、トップ10入りに値する。おっかないピエロ映画と迷った末のランクイン。

日本公開:公開中止 ※デジタル配信、DVD発売済み

Translated by Akiko Kato

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