元PRIDEヘビー級王者がFBIの捜査対象に ロシアゲートと総合格闘技のダークサイド

ヒョードルの弟の話に戻ろう。アレキサンダーの全身に彫られた意味深なタトゥーは、これまでに広く話題になり、分析や解釈が為されてきた。彼のタトゥーはナチ・サブカルチャーやロシア暗黒街のシンボルだ、と主張する批評家もいる。同じく彼に彫られた“Gott mit uns(神は我らと共にある、の意)”というフレーズは、第二次世界大戦中のドイツ国防軍が着用したベルトのバックルに彫られていた。アレキサンダー自身は、いかなる過激志向もないと否定している。アレキサンダーは過激派か超ナショナリストだ、という批判に対し彼は、「現在も、そしてこれからもいかなる過激な政治活動にも関わるつもりはない」と述べている。また、自分のタトゥーは単に、勇敢さや決して屈しない姿勢を表現しているにすぎないと、あるインタビューで証言している。「背中に彫られたドイツ語の“Gott mit uns”は俺にとって、いわば復活のシンボルだ」

トランプは、2015年に大統領選への選挙活動を開始して以降、不満を募らせ怒りを抱えた白人労働者階級の有権者を取り込もうと努めてきた。白人労働者階級の中には、極右思想や白人ナショナリストのグループに感化される者もいた。ロシアでも同様で、プーチンは右派のナショナリストによる強力な支持者グループを形成した。それら支持者の多くは、裏社会の武装グループやモーターサイクル・ギャングと関係していた。トランプとプーチンの支持者がそれぞれ、まるで音叉のようにお互いに共鳴しあい、また、総合格闘技とそれを取り巻く暴力的なサブカルチャーが、両方の支持者をつないだとしても不思議ではない。

ミュラー特別検察官による(大統領選に関わるロシア疑惑の)捜査や、FBIによるマイケル・コーエンに対する捜査、ヒョードルに対するFBIからの聴取などで、もし何らかの疑惑が出てくれば、米司法省や特殊検察官局は、また新たなトランプとロシアの疑惑の関係を追究することになるだろう。デヴィッド・フォン・ドゥレールは、総合格闘技に固執するトランプに関する皮肉を込めた印象的な記事で、以下のように指摘している。「現時点で米国民は、チャンネルを変えたいと思っている。事実、プロレスの視聴率はここ数年で下降している。しかし、トランプの話を熱心に聞くコアな支持者がいる限り、さらに下降は続くだろう。ロバート・“Gメン”・ミュラーが、ティルト・ア・ワール・ヘッドシザース(プロレス技の一つ)を決めたとき、トランプ支持者らは突然、現在の不快な状況に気付かされるだろう」

トランプ、コーエンとヒョードルとの関係に対する疑惑追究が(もしあったとしても)、ロシア疑惑の捜査にどのような影響を与えるかについて言及するのは時期尚早だ。米特殊検察官局による調査をフォローしている人なら知っての通り、トランプ大統領はロシア政界の大物をはじめ、ロシア独裁政権の支持者たちや不動産王などと、複数のコネクションを持つ。そして、トランプと彼の選挙スタッフや側近が、2016年の米大統領選挙時にロシア政府と共謀したという疑惑もさらに深まる。しかし、「トランプはロシアと関係ない」と繰り返し吹き込まれている人々にとって、トランプとヒョードルとの関係は、とても興味深いパズルのピースの一つとなるだろう。

Translated by Smokva Tokyo

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