5月5日にチャイルディッシュ・ガンビーノが発表した新曲「This is America」に、当時の彼の面影はほとんど見られない。かつてヒップホップの世界における狭義なマッチョイズムを批判した彼は、ミーゴスのクエヴォ、21サヴェージ、ヤング・サグ、ブロックボーイ・JBといった、これまで所縁のなかった面子をゲストに迎えた同曲で、重みのある短いラインから成るヴァースやアドリブの掛け声など、現在の主流ともいえるスタイルを披露している。『キャンプ』で分断された黒人のコミュニティに対する不満を歌った彼はこの曲で、今日における黒人の団結を生み出したのは繰り返される人種差別と暴力だと主張する。
2011年当時と現在では、彼のスタンスはまるで異なっているように思える。キャリア開始当初、ヒップホップのメインストリームとはまるで無縁だったチャイルディッシュ・ガンビーノは、ルールも指標も存在しない道を歩まねばならなかった。それ以来、彼はシーンにおいて唯一無二の存在であり続けている。曲がりくねった轍なき道を歩む彼にとっては、「This is America」も一つの通過点に過ぎないのだろう。