来日控えるライ、繊細なサウンドに込められた美意識を柳樂光隆が掘り下げる

ライの中心人物、マイク・ミロシュ

『Jazz The New Chapter』シリーズの監修で知られるジャズ評論家の柳樂光隆が、最新のアーティスト/音楽シーンを語る不定期連載がスタート。この第1回で取り上げるのは、さる2月にニュー・アルバム『Blood』を発表したライ。5月17日(木)に大阪・梅田CLUB QUATTRO、5月18日(金)に東京・ZEPP DiverCity Tokyoで来日公演を行う、日本でも人気のソウルフル・バンドを掘り下げてもらった。

同時代の最先端とも共振した、デビュー時の衝撃

―ライが最初のアルバム『Woman』を発表して、鮮烈なデビューを飾ったのが2013年の3月でした。その時はどんな印象を抱いてました?

柳樂:とにかくオシャレだなって(笑)。当時流行っていたアンビエントR&Bと、音的にも繋がっているような感じでしたよね。

―ちょうどフランク・オーシャンを筆頭に、「新しいR&B」が盛り上がっていた時期でしたよね。それにベッドルーム・ミュージック的ともいえる親密さがあったからか、インディ・ロック系のリスナーからも親しまれて。

柳樂:ライは歌もいいですよね。どう考えても女性ヴォーカルだと思っていたけど……。

―実際は男性だったと。中心人物のマイク・ミロシュが歌っているんですけど、最初は正体を明かしていなくて。

柳樂:そういうミステリアスな部分もよかったし、去年でいうシガレッツ・アフター・セックスと一緒で、中性的な魅力を秘めていますよね。シャーデーがよく喩えに出されるけど、ライの場合は声色にうっすらと男性性も入っていて、そこがある種の「媚びなさ」に繋がっていると思います。

―シンガーとしてのマイク・ミロシュは、どのように見ていますか?

柳樂:ハスキーで声を張らないタイプの女性ヴォーカルっていますよね。地声がウィスパーボイスっぽいというか。そういう声質を、たっぷりエフェクトをかけながら生み出しているのが特徴的ですよね。ライの音楽って、ほぼ全編でボーカルにリヴァーブがかけっぱなしじゃないですか。

―そうですね。

柳樂:だから透明感があるし、アメリカの黒人音楽っぽくないですよね。ジャンル的にはR&Bやソウルに括られるんだろうけど、消去法的にそうなっただけで、いうほどそれっぽくない気がする。むしろ個人的には、ソウル風味のスウェディッシュ・ポップとかのほうが近い気すらしますね。


ライ『Woman』収録曲「Open」

―北欧っぽさでいうと、ライはもともと二人組で。マイク・ミロシュはカナダ、もう一人のロビン・ハンニバルはデンマークの出身です。

柳樂:アメリカというよりはヨーロッパ的な響きがあると思うし、「アメリカのブラックミュージックに憧れる非アフロアメリカン」って感じの音作りにも、そういう出自が関係しているんじゃないかな。その流れでいうと、『Woman』にはディスコっぽい雰囲気もありましたよね。当時はディスコ・リバイバルの真っ只中で、そことも共振していた印象です。ダフト・パンクやブルーノ・マーズみたいな。

―ダフト・パンクの『Random Access Memories』が世に出たのと、ブルーノ・マーズの「Treasure」がシングルカットされたのは、どちらも『Woman』の2ヶ月後ですね。

柳樂:かといって、思い切りディスコっぽいわけでもなくて、もうちょっとポップな感じがしましたよね。演奏にしても、アシッドジャズとの中間ぐらいのさじ加減に聴こえるというか。ほかにも80年代のソウルやR&Bの要素が入っていたり、「アメリカのブラックミュージックに憧れる非アフロアメリカン」っぽさは随所に感じられるんだけど、音像そのものはアンビエントR&Bと確実にシンクロしていて。そこが新鮮だった。

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