Spotify、R・ケリー等の曲削除「誤りだった」と認める

Spotifyのプレイリストから削除されていたR・ケリー(Photo by Jamie Lamor Thompson / Shutterstock)

議論を呼んでいるSpotifyのヘイトスピーチポリシー。プレイリストからR・ケリーとXXXテンタシオンの曲を除外した処分を「間違っていた」とCEOのダニエル・エクは公表した。

2週間前に公表されて以来、Spotifyのヘイトスピーチポリシーとその適用方法については激しい議論が交わされているが、同社は早くもその内容の見直しを迫られることになった。同社のダニエル・エクは事態を受け、こうコメントを発表した。「思慮が足りなかった。我々の落ち度だと言わざるを得ない」

米現地時間5月10日、Spotifyは新たに定めたヘイトスピーチポリシーとその適用方法を公開し、そのルールを犯す作品には相当の処分を下すと発表した。同日のうちに同社は、性的暴行と家庭内暴力の容疑がかけられているR・ケリー、そして同じくDVの疑いが持たれているXXXテンタシオンの楽曲を、それぞれ人気プレイリストから除外した。しかし5月24日の時点で、Spotifyはすでにその姿勢の見直しを迫られていた。各方面から少なからぬ非難を浴びた同社は、XXXテンタシオンの楽曲をプレイリストに復活させると共に、音楽業界全体と足並みを揃えながら、プライベートで問題を起こしたアーティストに対する処罰の方法を見直していくと発表した。

エクは水曜に開催されたRecode社のカンファレンスで、Spotifyは音楽業界における「モラルの警察」になろうとしたわけではないと主張した。

「ここではっきりさせておくべきことは、当社の掲げたポリシーが何を対象にしていたのかということです。それはヘイトスピーチ全般です」彼はそう話す。「その目的は決して、モラルの警察が如く善悪の判断を下すことではありませんでした。何かの罪に問われた人物が有罪であるかどうか、そういったことは我々の守備範囲外であり、干渉する気は毛頭ありません。アートを提供するプラットフォームとして、Spotifyは多様な意見を反映すべきなのです。倫理観に口を挟むようなことは、我々の役目ではありません」

プレイリストにこそ復活していないものの、楽曲自体は登録されたままになっているR・ケリー等のアーティストに対して、エクは同社の態度を明らかにしなかった。同社は2017年に、白人至上主義を唱えるバンドの楽曲を削除したが、エクは今後もその姿勢については見直すつもりはないことを仄めかした。「厳格なルールが適用されるべき事柄というのは存在します。白人至上主義を声高に唱えるような音楽は、Spotifyには相応しくありません」

またエクは、同社の掲げたポリシーとXXXテンタシオンのケースへの対処方法については、アーティストやファンだけでなく、同社の従業員の間でも賛否両論だったことを明かしている。同社のアーティスト・リレーション部門の代表を務め、かつては実際にアーティストのマネージメントも経験したトロイ・カーターは、同社の掲げたポリシーに激しく反発し、一時は退社を検討していたと言われている。

「ヘイトスピーチポリシーを巡っては、社内でも様々な意見がありました」エクはそう話した。「議論は現在も続いています。Spotifyが最も重要視することのひとつは、明確な企業理念の実践です。そしてもうひとつは、フィードバックをサービスの向上に活かすことです。当社のヘイトスピーチポリシーについては、内容が曖昧すぎるという指摘が様々な方面から寄せられました。我々はそういった声に耳を傾けることで、企業として成長していかねばなりません」

Translated by Masaaki Yoshida

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