チャットモンチーが残した7枚のオリジナル・アルバムを本人とともに振り返る

左:福岡晃子 右:橋本絵莉子

昨年11月に「完結」を発表し、7月4日に日本武道館で行われる最後のワンマンと、7月21日・22日に地元の徳島で行われる「チャットモンチーの徳島こなそんそんフェス2018 ~みな、おいでなしてよ!~」を最後に活動を終えるチャットモンチー。

3ピースから2ピースへ、さらにはサポートメンバーを加えた体制から打ち込みへと、堅い意志と強い好奇心を持って変身を繰り返してきた2人は、「君は他の誰でもない君なんだから、思うように生きればいい」というメッセージを、その活動を通じて体現し続けてきたように思う。ラストアルバム『誕生』を含む、これまでに発表してきた7枚のオリジナル・アルバムを橋本絵莉子と福岡晃子とともに振り返ることによって、チャットモンチーという不世出のバンドの軌跡を追った。

-今回の取材では、最新作『誕生』を含む7枚のフルアルバムについて、振り返っていただきたいと思います。早速ですが、まずは2006年発表のファースト・アルバム『耳鳴り』。前年にミニアルバム『chatmonchy has come』でメジャー・デビューをしたばかりで、まだ右も左もわからない状態だったのかなと思いますが、実際にはどんな時期だったと言えますか?

橋本絵莉子(以下、橋本):このアルバムはほとんど地元の徳島で作った曲でできてて。まだ東京に住みかを持ってないから、ホテルとかに泊まって録ってたっけ?

福岡晃子(以下、福岡):そう、レコーディングのために上京してました。

橋本:全部が初めての経験だったけど、特に自分たち3人以外の人の意見を聞くっていうのが初めてで。原曲は3人だけで作るけど、プロデューサーの(いしわたり)淳治さん、エンジニアさん、ドラムテックさんとか、レコーディングするにあたっての会話がすごく多くて、「もっとこうしたら?」みたいにいろいろ言われたのが……壁でもあり、勉強にもなったし……頑張った気がします(笑)。



-学ぶことも多かったけど、第三者との意思疎通の難しさも感じていたと。

福岡:ここに入ってる曲は、当時徳島で何カ月もかけてアレンジした曲が多いんです。でも、それを東京で披露して、すぐに「ここ変えたら?」って言われたときのうちらの顔(笑)。

橋本:「え? これダサいん?」って(笑)。

福岡:あとすごい覚えてるのが、淳治さんは作詞家なので、歌詞に関してめちゃめちゃアドバイスくれたんですけど、私たち歌詞が先にできるバンドなので、普通のバンドより歌詞とアレンジの密着具合がすごいんですよ。そこを引きはがすのがかなり難しくて、淳治さんに言われてることはわかるんやけど、結果全然直せなくて。何回言われても、何回直しても、私たちがやるとどうしても「元の方がいい」っていう結果になっちゃって、「もういいよ(笑)!」ってさじ投げられたのは覚えてます(笑)。

-徳島で純粋培養されてきたというか、自分たちの世界というものがこの時点で強くあったんでしょうね。だからこそ、このアルバムはやっぱり名曲集だと思うし。

福岡:バンドをやってる女の子で、このアルバムを好きって言ってくれる子がわりと多くて、最近だとyonigeちゃんが「どなる、でんわ、どしゃぶり」をめっちゃ好きって言ってくれて。他のアルバムに比べて、ダーティな曲が多いというか(笑)、この当時のチャットモンチーはほとんどそうなんですけど、明るい曲が少なくて、ちょっと暗めなんです。でも、そういうのが好きだって言ってくれるバンドの子が多くて、うれしいなと思いますね。

橋本:ジャケットが赤なのもいいなって。当時は正直「これ大丈夫かな?」って、ちょっとだけ思ったんです。赤に黒って、ちょっと怖くないかなって。でも、今はめっちゃいいなって思います。かっこいいし、大好きです。

-ちょっとダーティっていう当時のイメージともリンクしますよね。赤、青、白っていう最初の3枚のジャケットの色の変化は、バンドが開かれて行くのとリンクしているような気もするし。実際、「シャングリラ」のヒットもあって、セカンドの『生命力』はより開かれた作品というイメージがあります。

橋本:『耳鳴り』を出して、ツアーを回ったときに、チャットの曲って途中でテンポが変わることがめっちゃ多くて、それをちょっとだけ「ごめん」って思う瞬間が出てきたんです。「このままのテンポだったら、もっとのれてたのに」って。デビューするまではそんなこと全然思ってなかったんですけど、ツアーをする中でそれが見えてきたんですよね。「お客さんのりにくそうだから、もうちょっとのりやすい曲あってもいいんじゃない?」って。

福岡:そう思って作った曲が『生命力』には結構入ってて、だからこのセカンド・アルバムには他の人もいろいろ言いやすかったと思う。ファーストに関しては、わからない世界っていうか(笑)。



-3人の世界だったと。

福岡:なので、ちょっとは開けてきてたかなあ……まあ、「ファーストよりは」って感じやけど。

橋本:サードよりは聞く耳あったよね。まだ素直っていうか……。

橋本&福岡:……いやあ、そうかあ?(笑)

-(笑)。やっぱり、3人の世界であることには変わりなかった?

橋本:でも、それでもちょっとずつ開いてはいたかな。

福岡:お客さんに対してはね。ファーストのときは、お客さんのこと敵だと思ってたんですよ。「みんな品定めしに来てるんだろう」と思ってたけど、何回も来てくれるお客さんもいて、こんなに好きだと思ってくれてるのかって、次はもうちょっとのれる曲を作りたいって、自然に思ったんだと思います。ライブの影響は大きかったですね。

橋本:それを経て、3人が出す3つの音にこだわり出すのが『告白』ちゃうかな。セカンドはまだギターを重ねたりしてて、でもライブで弾けへんっていうのが葛藤としてあったから、そういうのは一切なくして、3つだけの音でやりたいって言ったんじゃなかったっけ?

福岡:そうだね、ほとんど3つの音だけでやってます。

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