チャットモンチーが残した7枚のオリジナル・アルバムを本人とともに振り返る

-さっきのジャケットの色の話も含め、ここまでが3部作というか、『告白』で初期チャットモンチーのイメージが完成したような印象があります。

福岡:また今とは意味が違いますけど、このアルバムができたときは「やり切ったな」って思いました。3部作にしようとは思ってなかったですけど、このアルバムができたときは、この先2年くらい何も出さなくていいと思うくらいの満足感があった。これを持って、3年はツアー回れるなっていうくらい、いいのできたなって。自分の想像に一番近いアルバムができたと思った気がする。

橋本:『生命力』でちょっと歩み寄ったというか、ちょっと開いたんですけど、たぶんもう一回閉じたんですよね。「3つの音だけでいい」って。あとこのアルバムからセルフプロデュースを始めたんです。「もう一回自分たちだけのジャッジで曲を作ったらどうなるんだろう?」っていうところに興味が湧いて、やり始めたのがこの頃です。



-「Last Love Letter」と「あいまいな感情」の2曲がセルフプロデュースでしたね。一方では、淳治さんに加えて、亀田誠治さんもプロデューサーとして参加されていて、開かれた側面もあったアルバムだったのかなとも思うのですが。

橋本:うーん……でもなんか、やっぱり戦ってはいたかなあ。チャットモンチーの音楽が自分たちの想像よりも多くの人に聴いてもらえるようになって、その分「こうしたら?」とか「ああしたら?」っていう声も増えてきてたんですよね。そういうなかで、自分たちがどうしたいのかっていうジャッジはあくまで自分たちでするようにしてたし、すべてを委ねていたわけでは決してなかったですね。

-『生命力』を出して、初の武道館公演も成功して、周りの意見も増えた中、もう一回自分たちを見つめ直して作ったのが『告白』で、だからこそ、理想に近いアルバムができたのかもしれない。そして、さきほどの福岡さんのお話通り、その後はすぐに新作は出さず、翌年にはカップリング集の『表情 <Coupling Collection>』をリリースしています。

福岡:(『告白』を出して)けっこうツアーやったもんな。ホールやって、ライブハウスもやって。でも、その後もやっぱりずっと戦ってて、シングルを何の疑問も持たずにポンポン出すのってどうなんやろう?って思うようになったんです。特に、カップリングが全然知られてないことにびっくりして、かわいそうじゃんって思ったので、カップリング集を出して、ツアーもやって、それ以降はまともにカップリング出してない(笑)。

橋本:「嫌です」って(笑)。



-確かに、それ以降のシングルはほとんどがバージョン違いとか両A面ですもんね。

福岡:それ以前に『YOU MORE』はシングルを切らずに出したんです。

橋本:「シングル嫌だ、カップリング嫌だ、楽しい曲やりたい」って(笑)。『告白』は想いが詰まり過ぎてて、それをライブで伝えてきたし、カップリングもやったし、次はもうちょっと楽しくできる感じがいいんじゃない?ってなって、重すぎるやつは外したりして。

-文字通り「ユーモア」を重視したと。

橋本:カップリングってめちゃめちゃ遊んでるんですよね。シングルの「ちゃんといい曲って思わせなあかん」っていうのとははずれたところで作れるから、「そっち(表題曲)だけじゃないよ」って想いも込めてたんです。そういう要素がめっちゃ入ったアルバム。

福岡:シングルを出して、それがたまって次のアルバムに入る、みたいな状態も避けたくて。そうなると、アルバムの作品性の意味が変わってくるじゃないですか?その時期を詰め込んだって言えばそうですけど、全部にテーマを持って作ったかって言われると、そうじゃないことも多いから、一回テーマを作ってやってみたいっていうのもありました。

-ただ、結果的に『YOU MORE』は3人編成の最後の作品となってしまいました。

橋本:その前に出した『Awa Come』の頃から何となくそういう雰囲気は感じていて、でも実際に決まったのは『YOU MORE』のツアー中でした。好き勝手にやらせてもらったけど、果たしてこれがチャットモンチーの道として正しいのだろうか?って考えるようになったんですよね。3人で思いっ切り道を外れてみたけど、スタッフさんを含め、これでみんな幸せなんだろうか?って考えたときに、もう一回大通りに戻るというか、その方がチャットモンチーにとっていいのかもって思ったんです。もちろん、それが大変なのはこれまでの経験でわかってたから、「長続きしないかもしれないけど、もう一回戻ってみてもいいのかもね」って話をしたときに、くみこん(高橋久美子)は「戻れない」っていう選択肢になって。



-その結果、チャットモンチーは2人体制となり、しかも、福岡さんがドラムに転向するという、誰も想像しなかった展開が待っていて。

福岡:大通りどころか、山道入っていったな(笑)。

橋本:「どこ行ってんの?」って(笑)。

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