パンテラと故ヴィニー・ポールは、いかにメタルという芸術を革命的に昇華させたのか

故パンテラのドラマーのヴィニー・ポール(右から2人目)(Photo by Ron Galella, Ltd.)


ポールとダレルの父親ジェリー・アボットはカントリー界で有名なソングライター兼レコード・プロデューサーで、兄弟はレコーディング・スタジオを遊び場に育ったこともあり、彼らの音楽的な結びつきは兄弟愛と同じくらい強かった。パンテラのレコードのエンジニアリングとプロダクション面でデイトと緊密に作業していたポール(2000年のパンテラの最後のアルバム『激鉄/Reinventing the Steel』の共同プロデューサーとしてクレジットされた)は、弟のギター・ソロのレコーディング・セッションに常に同席していたのである。

「(ダレルが演奏している間)ヴィニーがいつもテープデッキを操作していたよ」とデイトがRevolver誌に語った。「だって、ダレルが再生し直してパンチインしたかったり、ちょっとした修正をしたかったりする場合、僕には説明しなきゃダメだけど、ヴィニーだと『ランディ・ローズのとこ、もう一度』とか、『ヴァン・ヘイレンっぽいとこ、もう一回』でわかるからね。あの兄弟は同じ音楽を聞いて育ってきたし、ある意味で二人で一人的なところがあるし、言葉にしなくてもわかり合える。何か違うと思えば、顔を見合わせるだけで理解できるんだ。それに、彼らのすごいところは、少なくとも僕は一度もケンカしているのを見たことがないってことだよ。彼らと一緒にあれだけ長くいたのに、たった一度もないし、兄弟にありがちな小競り合いすらなかった。あの兄弟は、僕が知っているどんな兄弟よりも仲が良い。逆に仲が良すぎて怖いくらいだった。いつも彼らvs世界って構図だったからね」と。

2年間の無活動のあと、2003年にパンテラは散々な状態で解散した。しかし、アボット兄弟は歩みを止めることなく、ダメージプランを結成して前進する。元ハルフォードのギタリスト、パトリック・ラックマンをヴォーカルに、ロバート・“ボブ・ジラ”・カカハをベースに迎え、2004年に『ニュー・ファウンド・パワー/New Found Power』をリリースした。このアルバムはラックマンと、『激鉄』の共同プロデューサー、スターリング・ウィンフィールドと一緒にポールとダレルがプロデュースを行い、音楽的には前バンドのグルーヴ・メタルを継承していた。ダメージプランがライブを行う会場は、パンテラ全盛期と比べるとかなり小規模になったとは言え、アボット兄弟がライブで見せる熱量はアリーナ公演のそれと大差なかった。しかし、突然の悲劇によって、2004年12月8日、兄弟の絆は永遠に引き裂かれた。オハイオ州コロンバスにあるアルロサ・ヴィラでのライブ中にファンの一人がダレルを銃殺したのである。(この事件の犯人の元海兵隊員ネイサン・ゲイルは銃を乱射して3人を殺害し、最期は警官によってその場で射殺された。)

自分の目の前で弟が殺害されるという事件のあとで音楽活動を再開するのは本当に困難だったはずだが、ポールは2006年にヘルイェーとして音楽シーンに戻ってきた。マッドヴェインとナッシングフェイスのメンバーを有するヘヴィメタルのスーパーグループが、このヘルイェーだった。ポールはパンテラのレガシーの保存と公開に大きく関与していたが、パンテラの再結成には一度も興味を示さず、ヘルイェーのレコーディングとツアーに意識を向けていた。

「俺たちはアルバムを5枚出したから、そろそろこのバンドのレガシーを発展させる時期だと思う」と、2016年のローリングストーン誌のインタビューでポールが述べている。これはヘルイェーのアルバム『Unden!able』リリース直後に行われた取材で、ポールはこんなふうに言っていた。「最初はどっちつかずの態度で様子見していたファンたちが、今はバンドを本当に受け入れてくれている。俺たちが演奏すると一緒に歌ってくれるんだ。それに、ミート&グリートは活気にあふれている。あと、『パンテラはいつ再結成するの?』という質問ももうされなくなった。そういう時期が長く続いたから、今の状態になったことが本当に嬉しいんだよ。みんな、これが今の俺だって理解してくれたのさ」。

2017年10月、ヘルイェーは6枚目のアルバムのレコーディングをもうすぐ始めると発表した。6月22日にポールが急逝してしまった現在、このアルバムがどうなるのかは明らかになっていないが、ヴィニー・ポールがこの世にいる間に、ヘヴィー・ミュージック界に永遠に消えない印(メタル的には“青あざ”か)を残したことだけは確かだ。

そっちでもグルーヴし続けてくれ、ビッグ・ヴィン!

Translated by Miki Nakayama

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