エレファントカシマシ宮本浩次「4人で報われる…そう思える時期がようやく来た」

―(笑)。紅白だけでなく、全国ツアー、さいたまスーパーアリーナ2DAYSもあったし、メディアにもたくさん露出したし、やれることは全部やった30周年アニバーサリーだったと思うんですが、ニューアルバムを作るエネルギーは枯渇しなかったですか?

宮本:それが枯渇してないんですよ。今回思ったのはコンサートってエネルギーを使うばっかりでもなく、チャージする場所でもあるだなぁって。どうしてそう思ったかというと全国ツアーでは「奴隷天国」「コールアンドレスポンス」「今宵の月のように」もやったし、「風と共に」みたいな新しい曲もやったんですけど、全部の曲がみんなに受け入れられて行く様を見ていたら100%自分たちの歴史が肯定されているなって思えたんです。だってあの「奴隷天国」でみんな喜んで、楽しんでくれるわけですよ。あるいは「生命讃歌」で変な踊りしてる人がいたりして。

―そうでしたね。

宮本:「生命讃歌」と「奴隷天国」なんてみんなしーんとしてじっと聴く曲だったんですから。昔から俺たちを撮ってくれてるカメラマンの岡田さんが 「『奴隷天国』の時は怖くてコンサート行けなかった」ってこの間言ってたぐらいなんで。でも、どの曲も30年の歴史の中でひとつの曲としてみんながちゃんと捉えてくれようになったことをステージ上で4人とも感じられたので、コンサートによってどんどん自信を持つことが出来たんです。それって完全にチャージなわけですよ。だから愚痴で「俺もう駄目だ、死んじゃうよ」みたいなこと言っている割にはどんどん曲も歌詞も作ってたんです。

―なるほど。

宮本:あと、「風と共に」や「RESTART」や「今を歌え」といった新しい曲を完成してすぐにコンサートで歌えるのも幸せだったし、疲れてきたなぁって思ったら紅白出場決定しました!ってステージ上で言って、また元気になったり。それから「Easy Go」はTVドラマ『宮本から君へ』の主題歌なんだけど、原作者の新井英樹さんや真利子監督や宮本役の池松壮亮さんもみんなパワフルな元気な素晴らしい人たちで。しかも池松さんもエレファントカシマシのことが大好きらしくて。なんかめげそうな時期になるとそういういいパワフルなネタが来て、それでまた元気になれたし。そういういいサイクルが起こりましたよね。だから、はりきって身体も作らなきゃってなったし、節制もしました。4人ともみんなステージのために自分の身を洗い清める感じで生きていたと思うんです。そんな感じなのでエネルギーの枯渇はなかったですね。

―で、アルバムを作るとなった時に、どんなアルバムを作ろうというコンセプトはありましたか?

宮本:「風と共に」、「今を歌え」、「RESTART」とシングルをどんどん作っていくなかで、初めてのレコード会社4社の枠を超えた30周年30曲3000円のベスト盤をみんなに届ける。初めての47都道府県のホールツアーを絶対に成功させる。30周年イヤーの骨組みはこの二本立てでした。しかもホールツアーに関しては集客面だけではなく体調面も含めて絶対成功させたかった。結果、10万人動員出来たんですけど、初めてですよ、10万人も入ったの。そのツアーを休む暇もなく……だって1週間で2回コンサートやり、そのリハもやって、詞と曲を作り、で、レコーディングをやって……本人としては何がなんだかわけが分かんないわけですよ。自分としてはコンセプトもなにもなくて、なにしろ〆切に間に合わせるってことだけなんです。でも、そうやってがむしゃらにやっていたら、自ずと浮き出てきたのが「RESTART」や「風と共に」なんですよ。その「風と共に」で“チケットなんかいらない 行き先は自由”って歌ってるんです。何のチケットなのかよく分からないんだけど(笑)。

―(笑)。

宮本:それを自らに置き換えると、忙しさの中、みんなからエネルギーをチャージしてもらうという最高のサイクルの中で進んで行くツアーと、どんどん出来てゆくシングル曲…どこに行くかは決めてないけど、その流れに身を任せていればいいのかなって思えましたね。で、今年に入って1月に「Easy Go」が完成して、さぁアルバム・タイトル考えなきゃならないって時に、出来てきた曲を振り返ってみると、自ずとそこにははっきりしたテーマがあるなと感じたんです。で、最初、アルバムタイトルは『RESTART』とか『Easy Go』がいいんじゃないかって思ってたんです。でも、最後に「Wake Up」という曲が3月の初旬に出来て、この曲がこのアルバムのテーマだって思えたんです。「Wake Up」のサビで何度も歌ってる“ゆこう go go go”がこのアルバムのテーマで、傷つくことを怖れている人が自由に目覚める、そのWake Upだったんだと、最後の最後に気がついたんです。


Photo by Motoki Adachi

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