セックス・ピストルズのグレン・マトロック、北朝鮮国境の38度線でのライブを語る

朝鮮半島の軍事境界線(38度線)で開催されたピース・トレイン・ミュージック・フェスティバルでプレイするセックス・ピストルズのベーシスト、グレン・マトロック

朝鮮半島の軍事境界線(38度線)で行われたピース・トレイン・ミュージック・フェスティバルに参加したセックス・ピストルズのベーシストのグレン・マトロックがシュールな体験語る。「南北の架け橋を支援したかったのと、クールなコリアンに会ってみたかったんだ」

2018年6月の終わり、北朝鮮との国境近くで開催されるピース・トレイン・ミュージック・フェスティバルに参加するため、セックス・ピストルズのベーシスト、グレン・マトロックは韓国へ降り立った。これから何が起きるか、この時の彼には知る由もなかった。韓国を訪れるのも初めてで、ましてやフェスティバル会場となる厳重に警備された軍事境界線など、近づいたことすらなかった。「南北の架け橋を支援したかったのと、クールなコリアンに会ってみたかったんだ」と彼は言う。「彼らの仲間だということを示し、北側の人々がどのような暮らしをしているかを見たかった」

出演者の中ではマトロックが最も有名な西洋人のパフォーマーだった。韓国からはセイ・スー・ミー、イ・スンファン、カン・サネらが参加し、ほかにはスコットランドのコロネル・マスタード&ザ・ディジョン5、フランスのジョイス・ジョナサン、さらに日本のミツメらも出演した。出演前にマトロックは、フェスティバルでのパフォーマンス内容を練っていた。まず1977年のピストルズの名曲『ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン』を韓国のベテラン・ロックグループのクライング・ナットと共演し、その後彼らのオリジナル曲に参加するというものだ。「俺みたいなセックス・ピストルズのメンバーが韓国語で歌うことに、みんな驚嘆したようだ」とマトロックは言う。「上手く歌えたかどうかわからないけどね」

マトロックはさらに、自らのソロ作品のほかピストルズの『プリティ・ヴェイカント』や『アナーキー・イン・ザ・U.K.』などを披露した。「“アナーキー〜”はピース・フェスティバルにふさわしくないだろうと思ったが、誰も気に留めていないようだった」とマトロックはローリングストーン誌に語った。「実際、会場全体が盛り上がった」
フェスティバルはマトロックにとって、普段は決して目にすることのない種類のパフォーマンスを経験する機会ともなった。「途中でステージにダンス・グループが出てきた。俺はその手のパフォーマンスは好きではなかったが、実際に見てみると、とても感動的だった」

マトロックは、ソウルからほかの出演者と一緒に、列車に乗って軍事境界線へ向かった。「世界でも珍しい手つかずの地域だ」と彼は言う。「国境近くには野鳥の棲むエリアがあり、鶴も飛来している。全ての雰囲気が本当に素晴らしかった」



マトロックは、「将来的に北朝鮮と韓国が統一できるよう手助けすることが目標なんだろうな」と思いながら到着したが、全ての人がそう思っている訳ではないことを悟った。「統一は、そこに住むほとんどの人々が望む最終的な目標のようだった」と彼は言う。「韓国の人々は、自分たちの高い生活水準を北朝鮮に合わせたくはないと思っている。今の彼らはただ隣人と仲良くしたいのと、自分たちの上に核爆弾が降ってくるのを避けたいだけなんだ」

フェスティバル出演を終えたマトロックが次に注力しているのは、ソロ・アルバム『グッド・トゥ・ゴー』だ。同アルバムは、デヴィッド・ボウイのギタリスト、アール・スリックとアメリカでレコーディングした。「とてもシンプルなアルバムだ」と彼は言う。「“ラウド・スキッフル”といえる作品だ。数年前にロイヤル・アルバート・ホールで観たボブ・ディランに触発されて作ったんだ。特にディランのファンという訳ではなかったが、彼のバンド・パフォーマンスは素晴らしかった。“ああいうのをやりたい”と思ったね」

セックス・ピストルズについて、マトロックはバンドのフロントマンであるジョン・ライドンと最後に話したのは、2008年に行われたピストルズのコンバイン・ハーヴェスター・ツアーの最終日となったスペインのアスケナ・フェスティバルだという。マトロックによると、現時点で今後の活動プランはないようだ。「でも、俺たちは前にもそんなことを言っている」と彼は言う。「ジョン次第なんだ、本当に。禁酒中の奴もいれば、そうでないメンバーもいる。スティーヴ(ジョーンズ、ギタリスト)は禁酒中で、俺もそうだ。好きに解釈してくれていいよ」

Translated by Smokva Tokyo

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