ロック史に残るMVの金字塔、エアロスミス黄金期の「アリシア三部作」を振り返る

ティーンムービーの傑作『初体験/リッジモント・ハイ』でその名を知られていた映画監督のエイミー・ヘッカーリングは、この三部作を見たことが『クルーレス』の誕生につながったと話す。「アリシアのことはあのビデオで知ったの」ヘッカーリングは1995年に本誌にそう語っている。「トレッドミルで汗を流しながらMTVを観てた時に、『クライン』のビデオが流れたの。あの時の衝撃は忘れられないわ」

ティーンファッションのお手本となり、オスカー・ワイルド譲りのウィットを披露するシェール・ホロウィッツをシルヴァーストーンが演じた『クルーレス』は、処女で車を運転しない少女たちの意見さえ反映しなければ、間違いなく90年代におけるマスターピースのひとつに数えられるだろう(ローリングストーン誌による「90年代最高の映画100選」の投票の際に、筆者は『クルーレス』を第1位に推した)。

マーティー・カルナーの目論見は見事に功を奏したといえる。元祖『Pee Wee Herman Show』のディレクターであり、ツイステッド・シスターの「ノット・ゴナ・テイク・イット」、ポイズンの「フォーリン・エンジェル」、シェールの「ターン・バック・タイム」、ホワイトスネイクのタウニー・キティン三部作、そしてエアロスミスの「デュード」など、数々の名ミュージックビデオを世に送り出してきた彼は、80年代初頭からバンドのカムバックを支え続けた。このアリシア三部作は彼にとっても、ともすれば馬鹿げたそのセンスが高次元で結実した最高傑作といえるだろう。

『クルーレス』の公開後、ローリングストーン誌の表紙を飾ったシルヴァーストーンは、自身のヒップなイメージに対する違和感を口にしている。「世間の私についての言動や行動には、正直うんざりさせられることもあるわ」彼女はエアロスミスのイメージから自身を切り離そうとしていたという。「ミュージックビデオ専門の女優っていうイメージを持たれたくないの。真剣に演技に取り組んでいる私にとって、ミュージックビデオへの出演はおまけみたいなもの」

そう話す彼女は現在、パラマウント・ネットワークの新ドラマ『American Woman』で、70年代のビバリーヒルズに暮らす母親役を演じている(そのキャラクターは『Real Housewives of Beverly Hills』のカイル・リチャーズをモデルとしている)。また先日はジミー・ファロンの番組のリップシンクバトルに登場し、「クルーレス」の衣装を着てイギー・アゼリアの「ファンシー」に挑戦している。いずれにせよ、今も色褪せないエアロスミスのビデオ三部作が「アメイジング」であることは確かだ。



Translated by Masaaki Yoshida

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