クイーン伝記映画『ボヘミアン・ラプソディ』、製作陣が語る完成に至る苦悩と情熱

2018年11月より全国ロードショーするクイーンの伝記映画『ボヘミアン・ラプソディ』(Photo by Alex Bailey/Twentieth Century Fox)

映画『ボヘミアン・ラプソディ』主演のラミ・マレックとプロデューサーが、クイーンの伝説を映画化するまでの苦悩のエピソードをローリングストーン誌に語った。本作製作陣はいかにしてフレディ・マーキュリー役を見つけたのか。そして、クイーンの軌跡を映画化するまでに、どれほど長く険しい道のりを耐え忍んできたのか。

今年5月、クイーンの軌跡を描いた新作映画『ボヘミアン・ラプソディ』(2018年11月より日本全国ロードショー)の予告編がインターネット上で公開された。『MR. ROBOT/ミスター・ロボット』のレミ・マレックが見事フレディ・マーキュリーへと姿を変える姿が、ついに全世界に明らかにされたのだ。だが、映画の完成までにはかくも長く、苦渋に満ちた道のりがあったことは知られていない。ちまたでも話題になったキャスティングの難航、伝説的ロック・バンドの壮大な物語を2時間に凝縮させるという不可能に近い作業、さらに製作終盤でのブライアン・シンガー監督の降板。「やきもきしっぱなしだった」と語るのは、プロデューサーのグラハム・キング。「紆余曲折はあっても、何がなんでも映画を完成させなくては、と心に決めた」。

事の始まりは10年前にさかのぼる。ギタリストのブライアン・メイが、サシャ・バロン・コーエン主演でクイーンの映画の製作を仄めかしたのがきっかけだった。だが、バンドとコーエン側の話し合いは早い段階で物別れに終わった。2016年、『ボラット』の主演スターはハワード・スターンの番組に出演した際、真相を暴露した。彼の主張によれば、バンドメンバーの1人がフレディは映画の前半で死ぬべきだ、言ったそうだ。「それで僕が、『じゃあ映画の後半はどうなるんだい?』って尋ねたら、返事はこうだった。『いいかい、主役がエイズで死ぬ映画なんて、誰も見たくないだろ? 彼の死後もバンドは継続していく様子を描くのさ』(メイは当時、コーエンのこの主張をきっぱりと否定した)」

「サシャがこのプロジェクトに正式に絡んだことは一度もない」とキングも言う。「フレディを白人の俳優に演じさせるなんて、考えたこともなかったし、映画の途中でフレディ・マーキュリーが死ぬなんて脚本も、存在したことはない。一度もだ。このことに関してはずっと口を閉ざしてきたけど、これからは本当のことを暴露するよ」

ベン・ウィンチェルの起用がささやかれた時期もあった。だがある日、共同プロデューサーのデニス・オサリバンが電話をかけてきた時に全てが変わった。彼はたったひとこと、「フレディを見つけた」と言い、フレディを熱演するマレックの映像を送ってきた。「私も、彼だ、と思った」とキング。「これで決まり。彼で行こう。プロデューサー側では、彼以外にフレディ・マーキュリーはあり得ないという意見が揺るいだことは一度もなかったよ」

彼らプロデューサーの熱意は、マレックを完全に驚かせた。「誰かが自分をからかってるんだと思った。でもグラハムと話をしてみて、ひょっとしたら現実かもしれないという感じがしてきた。圧倒されたよ。めちゃくちゃ興奮したし… その後で、事の重要さをひしひしと感じた。心臓が鼓動を打つたびに、何かが飛び出して行ってしまうような感じだった」

Translated by Akiko Kato

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