ロック勢が束になっても敵わない、ドレイクによる前人未到のチャートアクション

前人未到のチャートアクションを実現させたドレイク(Photo by DFree / Shutterstock.com)

ドレイクは今週Billboard Hot 100に27曲を送り込み、圧倒的な存在感を見せつけた。チャートの約3分の1というその占有率は、いくつかのジャンル全体を凌駕している。ロックもそのひとつだ。

「俺が史上最も偉大なアーティストかはわからない でもそうなりつつあることは確かだ」ドレイクは2014年発表の「ゼロ・トゥ・ハンドレッド」でそう歌った。あれから4年、彼はそれが事実であることを証明してみせた。彼はこれまでも幾つもの曲でセールス記録を更新してきたが、6月末の2枚組アルバム『スコーピオン』のリリースにより、Billboard Hot 100の約3分の1を独占するという、まさに前人未到の偉業を達成してみせた。

火曜日の朝に発表された集計によると、今週のHot 100にはドレイクのトラックが合計27曲ランクインしている。彼は2017年4月にアルバム『モア・ライフ』をリリースした初週、同チャートに24曲を送りこむという史上初の偉業を成し遂げたが、単一アーティストによるBillboardチャート占有率における記録を、今作で再び更新してみせた。それだけでなく、楽曲の大半はチャートの上位に登場している。Top 10に7曲を送り込んだ彼は、同チャートに5曲を登場させたビートルズが持っていた記録を更新した。その他の曲はすべて13位〜57位の間にランクインしている。
 


チャートの約3分の1というその占有率は、いくつかのジャンル全体を凌駕している。ロックはそのひとつであり、チャートインしたのはわずか12曲にとどまっている。ロックは長い間アメリカにおいて最も人気のあるジャンルであり続けたが、近年ではその座をヒップホップとR&Bに明け渡している。しかし先日発表されたニールセン社の今年の中間報告によると、ロックのオーディエンスは現在も全体の23パーセントを占めているという。2018年のHot 100年間ランキングでラップの曲がロックのそれを上回ることはまず間違いないが、いちアーティストのチャートアクションが特定のジャンル全体を凌駕するという状況は、ドレイクの抜きん出た存在感を物語っている。

マーケティングの面も優れている。Hot 100におけるドレイクの圧倒的チャートアクションの原動力、それはストリーミングサービスだ。楽曲単位で課金するiTunesとは異なり、SpotifyやApple Musicは定額制で聴き放題のため、アーティストは長尺のアルバムを発表することで再生回数を稼ぎやすくなる。また発売直後に展開したSpotifyのテイクオーバーキャンペーンにより、『スコーピオン』は何千万人ものユーザーの目に触れることになった。(アルバムの再生は強制的ではないものの、ストリーミングにおける聴き放題というコンセプトはユーザーの好奇心を煽り、Spotifyのホームページを占領したキャンペーンは同作に対する一般リスナーの関心を集めた)

それらの戦略は見事に功を奏した。『スコーピオン』に収録された25曲すべてが今週のHot 100に登場した他、ドレイクがゲスト参加したブロックボーイ・JBの『ルック・アライヴ』、そしてリル・ベイビーとの共作『イエス・インディード』もランクインしたことで、全27曲をチャートに送り込むという前人未到の偉業を達成する形となった。

Translated by Masaaki Yoshida

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