ニール・ヤングが1971年に「週末に」を初披露した貴重映像を振り返る

ニール・ヤング、1971年 Marka/Alamy

若き日のニール・ヤングが、『ハーヴェスト』からのファーストシングルを初お披露目したBBCの貴重な映像を振り返る。

ボストンのワン劇場で2夜に渡るソロ・コンサートを終えたばかりのニール・ヤング。彼の音楽人生を網羅した見事なショウだった。演奏した楽曲の大半は1970年代、バッファロー・スプリングフィールド時代のものが中心で、「折れた矢」「Homefires」など極レア曲も演奏された。オフィシャルサイト以外ではほとんど宣伝されていなかったにも関わらず、各公演ともソールドアウト。サイトではファンが優先的にチケットを購入できるようになっていた。最終日の後、サイトには「劇場ツアーはこれにて終了。だが、これからまだ追加公演を予定している」とのメッセージが公開された。

今回のコンサートは、1971年、『アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ』の後、新曲を引っ提げて行ったソロ・コンサートとほぼ同じ形式で行われた。当時のコンサートのいくつかはライブアルバムとしてリリースされている。なかでも有名なのは、1971年1月19日のマッセイ・ホールでのコンサートだが、映像が残っているのは1971年2月23日のBBC特別番組用に収録されたものだけ。前年、ニールはCSNYとしてロンドンで公演を行っているが、ソロでとしてヨーロッパで演奏するのはこの時が初めてだった。

収録が行われたのは、ニールが『ハーヴェスト』のリリースする1年以上も前。にもかかわらず、収録では制作進行中のアルバムから新曲5曲を披露した。その中には、のちに『ハーヴェスト』のファーストシングルとなる「週末に」も含まれており、この収録で初お披露目となった。動画を見ていただければお分かりの通り、曲は9割がた完成している。完成版と違う点といえば、出だしがコーラスから始まるところだろうか。また、歌詞を忘れてしまったのか、それとも未完成だったせいなのか、2番の「俺は走り出した/このまま朝まで起きていようと」のくだりはごっそり抜け、代わりにハミングが続いている。

この4日後、ニールはロンドンのロイヤル・フェスティバル・ホールでも「週末に(原題:Out on the Weekend)」を演奏。だが翌年『ハーヴェスト』を完成すると、音楽活動からは身を引き、映画『Journey Through the Past(原題)』の製作に専念。痛めていた背中も手術した。現在、このアルバムは彼の最高傑作といわれ、シングルカットされた「孤独の旅路」はヒットチャートのトップを飾った。多くの音楽評論家がこの作品を絶賛しているが、ローリングストーン誌ほど熱烈なファンはいないだろう。

「ニール・ヤングはロックンロールの権威としての立ち位置に固執し、メロウでカントリー調の典型的な吟遊詩人の役に徹している。もはやエレキギターを演奏することはほぼなくなり、クレイジー・ホースと組んでいたころの独特のうっとりする節回しや、鳥肌ものの感情のほとばしりは見られなくなってしまった」音楽評論家のジョン・メンデルソーンは、ページを割いてかなり手厳しく批判している。「いやはや、このアルバムで唯一聞かせどころの「歌う言葉」のソロパートも、もたついてまとまりに欠け、ぶざまともいえよう」

幸い、当時のニールにとっての慰めは、メンデルソーン氏はレッド・ツェッペリンの4枚のアルバムをこき下ろしているという事実。そのうち2枚はファーストとセカンドで、残る2作もミリオンセラーを記録、長年にわたって愛されている。レッド・ツェッペリンはすでに表舞台から去っているが、ニール・ヤングはいまだ健在。先週のコンサートで演奏された「週末に」は、47年前にロンドンで初披露されたときと変わらず、美しく響いていた。



Translated by Akiko Kato

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