21世紀のボブ・ディラン秘話 ディランが「ロックンロール以前の時代」に立ち返った、その目的

2000年以降のディランの作品は、その多くがロックンロール以前の時代に立ち返っている(Photo by Photo by Gus Stewart/Redferns via Getty Images)

いよいよ開幕したフジロック。Rolling Stone Japanでは29日に出演するボブ・ディランのアーカイブを再構成し、ライブ前日まで全12回の連載記事をお届けする。第十回は2000年以降のディランについて。

1997年にリリースした『タイム・アウト・オブ・マインド』以降、ボブ・ディランは何度目かの全盛期を迎えている。同作はグラミー賞の最優秀アルバム賞を獲得。2000年には映画『ワンダー・ボーイズ』の主題歌「シングス・ハヴ・チェンジド」がアカデミー歌曲賞を受賞した。そして、2006年作の『モダン・タイムス』では、30数年ぶりの全米1位を獲得している。ここでは、近年のディラン復活の足掛かりの一つであり、最新のライブでも収録曲の「ホネスト・ウィズ・ミー」がセットリストに織り込まれている『ラヴ・アンド・セフト』(2001年)についての貴重なインタビューを振り返りたい。

「俺が生まれた頃は、まだとても強い(ジャズやブルースの)魂が残っていた」

2000年以降のディランの作品は、その多くがロックンロール以前の時代に立ち返っている。『ラヴ・アンド・セフト』も、シカゴ・ブルースやティン・パン・アレーのクルーニング、ジャンプ・ブルース、ウェスタン・スウィングに浸ったアルバムだ。その音楽的なインスピレーションについて、ディランはローリングストーンの取材でこのように語っている。

「俺の全ての曲に取り入れているスタイルは、俺が生まれる前から全部出来上がっていたんだ。俺が生まれた頃は、まだとても強い(ジャズやブルースの)魂が残っていた。ビリー・ホリデイはまだ生きていたし、デューク・エリントンも、ブルース・シンガーもみんなまだ生きていた。俺にとって大事なのはそういう音楽で、ポップ音楽にはほとんど興味がなかったんだよ」

『ラヴ・アンド・セフト』に参加したギタリストのラリー・キャンベルも、このアルバムが何か特別なものになるだろうと予感していたという。ディランから収録曲『ポー・ボーイ』のコード進行を聴かせてもらったときのことを、キャンベルはこのように振り返っている。

「ボブ・ディランの曲にしては比較的洗練されたコード進行だったね。どんな内容のアルバムになるかを感じさせる、最初の兆候だった。ジャズの要素が取り入れられ、フォークの感性が添えられていたんだ」



Edited by The Sign Magazine

FUJI ROCK FESTIVAL’18
期間 : 2018年7月27日(金)、28日(土)、29日(日)
会場 : 新潟県 湯沢町 苗場スキー場
※ボブ・ディランは7月29日(日)に出演
http://www.fujirockfestival.com/

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