不屈のエース・棚橋弘至がサンフランシスコで見た現実

「G1 SPECIAL IN SAN FRANCISCO」の会場でインタビューに応じた新日本プロレスの棚橋弘至(Photo by OGATA)

1976年生まれの棚橋弘至は2000年代から2010年代にかけて新日本プロレスを牽引してきた一人だが、米国・サンフランシスコの地で彼は「過去完了形」ではなく「現在進行形」であるということと、「ネクスト」を見せられていない責任は自分にあるとローリングストーンに話してくれた。

「新日本プロレスが苦しいときに支えてくれた最大の功労者」「プロレス人気復活の立役者」という評価は事実だし、過去の実績も輝かしい。毎年1月4日に東京ドームで開催されている新日本プロレスのビッグイベント「WRESTLE KINGDOM」では、2007年開催の第1回目から数えて、通算12回のうち8回メインイベントに出場(ちなみにオカダ・カズチカは6回)。しかし7度の戴冠記録を持つIWGPヘビー級のベルトからは2014年以来、遠ざかっている。

「次の世代」の台頭もあり、主要タイトルの戦線からは外れてはいるものの、筆者が見た2017年「WRESTLE KINGDOM 11」での内藤哲也戦など、今もプレイヤーとしてここぞというときに存在感を見せつける。ハイフライフロー、スリングブレイドなどの華やかな技を交え、足4の字、スリーパーなどを効果的に繰り出し、ダイナミックな肉弾戦で楽しませてくれる。

そんな棚橋にとって、今年の「G1 CLIMAX 28」は自分との闘いでもある。記者会見では「ライバルが誰とか注目選手が誰とか、17年も出ていると特にあげる必要もない。今のマット上の流れに抗うという意味でライバルは新日本プロレス、ライバルは棚橋弘至。ちょっくら、優勝してきます」と語っているが、その発言に重みを感じてしまったのは、サンフランシスコで開催された「G1 SPECIAL IN SAN FRANCISCO」に同行したからである。


Photo by OGATA

月額制の動画配信サイト『新日本プロレスワールド』の会員数が約10万人、そのうち約半数近くが海外からの加入者だという。そのことからも分かるように、新日本プロレスのコンテンツは海外市場でも十分通用するものだ。選手単位で海外に行って試合をすることは多々あるし、アメリカのプロレス団体・ROH(Ring of Honor)との合同興行も不定期で開催されているが、新日本プロレス単体で継続的に海外興行を行う、というのは初めての試みである。

昨年7月以来となる3月のロサンゼルス興行は4500枚のチケットが約10分でソールドアウト。7月7日のサンフランシスコ興行は新日本プロレスが開催してきた海外興行では過去最高の動員数(6333人)を記録。

さらに、9月30日にはロサンゼルス・ロングビーチのWalter Pyramidにて、同会場で2回目の大会となる「Fighting Spirit Unleashed」を開催。11月10日、11日は「Lion’s Break: Project 1」をキャラエキスポUSA内で開催することが決まっている。またROHとの合同興行として、2019年4月6日にニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで「G1 SUPERCARD」開催も決定している。

アニメやマンガと並び、プロレスも今や日本が誇るコンテンツだと言っていいだろう。アメリカにはWWE(World Wrestling Entertainment)という世界最大のプロレス団体があるが、WWEが標榜する「スポーツ・エンターテインメント」とは異なる、新日本プロレスの「ファイティング・スピリット」「ストロング・スタイル」を好む熱狂的なファンが海外にはいるのだ。

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