「存続が危ぶまれる」レベルの深刻な財政難に陥った全米ライフル協会

同訴訟は、ニューヨーク州の金融規制当局が、NRAブランドの保険販売を違法だとして差し止めたことに端を発している。NRAは、合法的に所持する銃の発射に伴う法的費用を保険で負担する『キャリー・ガード』を、積極的に販売してきた。2018年5月ニューヨーク州は、キャリー・ガードを「銃の所有者による意図的な不正行為に対して非合法的に賠償責任保険を提供するもの」と認定した。NRAのパートナーだった保険会社は、同保険の販売を停止し、700百万ドル(約7億8000万円)の罰金の支払いに合意した。

NRAは訴状の中で、ニューヨーク州はひとつの保険商品を禁止するだけに留まらず、NRAと保険会社や銀行などの様々な金融サービス提供者との関係を断ち切るキャンペーンを実施した、と主張している。

NRAは、直面する財政危機に関する詳細について明らかにしていないが、開示された最新の財務情報によると、2016年に同組織は、約4600万ドル(約56億2600万円)の赤字を出している。

NRAは、フロリダ州パークランドで発生した銃乱射事件をきっかけとした州の規制当局からの圧力を非難している。当局は各金融機関に対するレターの中で、「最近発生した恐ろしい事件を直接経験した若者たちによる、情熱的で勇気のある明確な声」に耳を傾けるよう促した。さらに2018年4月、クオモ知事自身もツイッターに、「私はニューヨーク州の企業に対し、自分たちの評判や世間に対する責任を考慮し、NRAとの関係を見直すよう勧める」と投稿した。

NRAは同団体に対する州からの一連の行動を、「NRAを黙らせ、NRAとの関係をボイコットさせるための悪意ある陰謀」と表現している。クオモ知事や州の規制当局は、「個人による銃器所有の権利を認める憲法修正第2条を支持する立場のNRAを抑えつける」ことを意図し、「NRAの政治的主張を妨害・阻止し、報復措置を取るための違法行為」を進めてきた、とNRAは主張する。

また訴状の中でNRAは、同団体と長年に渡りパートナーシップを組んできた保険会社が2018年冬で取引を中止し、「いかなる条件でも契約を更新したがらない」ことも明らかにしている。NRAは、「失った補償に代わる企業保険に加入することができない困難な状態に陥った」と主張する。さらに、“複数の銀行”が「基本的な銀行預金サービスを提供するだけでも、NRAと関係することで規制の対象となる可能性が懸念される」として、NRAとの取引を躊躇しているという。

NRAは、「同団体と様々な組織との契約や取引関係を妨害したり中止させようとする」州規制当局による行為の即時差止命令を求めている。裁判所による介入がなく「被告の行為により保険や銀行サービスが提供されなければ、NRAは回復不可能な損失と損害を被るだろう」と訴えている。

クオモ知事にもコメントを求めたが、返答がない。しかし知事は以前、NRAによる告訴を、「より多くの銃を販売しようとする団体による、危険な目論見を推進しようとする無駄で自暴自棄な行為」として一蹴している。

Translated by Smokva Tokyo

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