トランプ政権下の分断社会にスパイク・リー監督が提言、新作『ブラック・クランズマン』に込めた思いを語る

―黒人監督が作品の中で描いている問題で、現在特に率直に対応しないといけない急を要する問題は何ですか?

そうだな、私が世間にこうするべきだと言う時代は終わったよ(笑)。人はそれなりの道を歩いている。通りの右側を歩いている人もいれば、間違った側を歩いている人もいる。結局はそこに行き着くんだよ。

―モンゴメリーにあるThe National Memorial for peace and Justiceには行かれましたか?

いや、まだだ。でも行きたいと思っている。

―4月のオープニング・ウィーク中に訪問したのですが、そのとき、あなたが自分の作品に込めたアートを考えました。つまり、人種差別を克服するときのあなたの率直な表現方法を考えていました。

私が作ったドキュメンタリー『4 Little Girls(原題)』は見たことがあるかい? 最高の、本当に最高の私にとっての活動家で、私の作品全部に出演しているジュディ・ベイリーが、4人の少女の検視写真を見つけた(彼女たちは1963年にアラバマ州バーミンガムの16番通りにあった教会にクー・クラックス・クランが仕掛けた爆弾で殺害された)。しばらくの間、その写真を使うかどうか、かなり悩んだよ。しかし、私の中の魂が、その写真を使うべきだ、世間に彼女たちがどんなふうになったかを教えるべきだと言ったんだ。アメリカのテロリズムのどんな行動が、ダイナマイト・ボブ・チャンブリスをして、あの美しい少女たちを吹き飛ばす行動に導いたのか。世間はそれを見ないといけないと思ったね。

―『ブラック・クランズマン』は最後に2017年のシャーロッツビル暴動の記録映像で終わります。それは、デモに抗議する群衆に一人の白人至上主義者が車で突っ込む瞬間で、この男がヘザー・ヘイヤーという名前の若い女性を轢き殺します。この記録映像を使うことにした理由は何ですか?

さっきと同じことだ。この作品を撮影し始めたのが9月だった。シャーロッツビルの事件が起きたとき、それがこの作品の最後になると私は確信していた。まず最初に、ヘザー・ヘイヤーの母親スーザン・ブローさんから映像の使用許可をもらわないといけなかった。これは誰かの娘さんがアメリカ人のテロ攻撃で殺害される真実の映像で、アップルパイ、ホットドッグ、野球、綿菓子、アメリカ文化で育った国産のテロリズムなんだ。ブローさんにはもう娘がいない。アメリカ人テロリストが人混みに溢れた通りに車で突っ込んだせいでね。それに、あの映像に映っている、車が来るのを知っていた人も、車が見えた人も、何も言ないんだよ。みんな、あそこに座って、プリンスが黒人霊歌「Mary Don’t You Weep」を歌うのを聞いている。最後にこの曲が聞こえたかい?

―プリンスの声は一瞬でわかりました。あれはどうして実現したのですか?

エンディングの曲が必要だと思っていたんだ。そして、ここ最近Spotifyの重役の一人トロイ・カーター(プリンス・エステートのアドバイザーでもある)ととても仲良くなったので、トロイをプライベート試写に招待した。試写後に彼が「スパイク、曲がある」とトロイが言ったんだよ。それが「Mary Don’t You Weep」で、80年代半ばにカセットテープに録音されていた。プリンスはその曲を私に使ってほしかった。だから他の連中が何を言おうが関係ないね。私の兄弟のプリンスがあの曲を私にくれたんだから。あの映画に提供したんだから。それ以上の説明は必要ない。このカセットテープは、ペイズリー・パークの保管庫の奥にしまってある。突然、何の前触れもなく、この曲が見つかったって? いやいや、あれは偶然じゃないよ(笑)。

―今のアメリカが向かっている未来に明らかに不満ですよね。あなたの作品には、国民の欠点や失敗を明らかにして、国が良い方向に進むようにするという目的があるのでは?

「Wake up(目覚めよ)」に戻ろうと思う。この言葉はほとんどの作品に登場するんだ。目覚めよ。気をつけろ。寝ぼけているんじゃない。テキトーを選ぶな。シェナニガン(ペテン、ごまかし)、サブタフュージ(言い逃れ、欺瞞)、スカルダガリー(不正行為)を選ぶな。それはやめろ。今、自分が生きている時代を最大限に活用して、憎しみやくだらない感情に巻き込まれるな。ってこと。



『ブラック・クランズマン』
2019年3月22日より全国公開
監督:スパイク・リー
キャスト:ジョン・デヴィッド・ワシントン、アダム・ドライバー、ローラ・ハリアー、トファー・グレイス、アレック・ボールドウィン
公式サイト:http://bkm-movie.jp/

Translated by Miki Nakayama

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