パール・ジャムがシアトルで開催する大規模展示会の全貌:盟友バンドマンに捧げた企画展

「パール・ジャム:ホーム・アンド・アウェイ」は米国現地時間8月11日にオープンし、2019年の年始まで公開される。この展覧会のオープニングは、パール・ジャムの5年ぶりのホームタウン公演ザ・ホーム・ショーズの直後となる。ザ・ホーム・ショーズと銘打った一連のコンサートは、シアトル市内のホームレス問題を救済するために寄付金をすでに115万ドル(約12億7500万円)集めている。

MoPOPのキュレーター、ジェイコブ・マクマレイとパール・ジャム活動家兼ビデオグラファーのケヴィン・シャスが協力して、200以上のアイテムが展示されるこの展覧会を実現した。シャスはパール・ジャムの友人でありビデオグラファーだった時代に収集した約30年分のアーチファクトを引っ張り出してきたのである。エディ・ヴェダーの大理石柄のノートとタイプライター、歌詞が手書きしてある紙、ステージとビデオで使用した小道具、ライブのチラシ等など。バンドのリハーサル室を再現した空間があり、ファーストアルバム『Ten』のそびえ立つ文字も展示されている(ここはファンにとって最高の撮影スポットとなるだろう)。シャスがバンドと仕事を始めた28年前、これらのアイテムがミュージアムで公開されるなど夢物語以外の何物でもなかった。「展示物一つ一つがその当時の情景を思い起こさせる」とシャス。「中には金額的に他のものよりも価値の高いものもあるけど、どこかで配布された小さなチラシでも、そういうものに負けないくらいの価値があるね」。

アメンにとって、今回のホームタウン公演は、1992年にシアトルのマグナスン・パークで行った伝説のドロップ・イン・ザ・パーク公演の拡大版という立ち位置だ。ドロップ・イン・ザ・パーク公演はチケットが配布された無料のライブだった。当時、パール・ジャムはシアトルで15公演をすでに終わらせていて、そのお返しに何かしたいと考えたのである。「当時の俺たちのお返しは無料ライブを行うことだった。今のお返しはシアトルからホームレスがいなくなるように協力することさ」とアメン。「年を経て俺たちのアイデアが大きくなったし、これがこのバンドの素晴らしいところの一つなんだよ。俺たちは何でもできるって思うタイプなのさ」。

のべ10万人のファンが来場すると目されている展覧会のあと、アメンは展示したウッドのブロンズ像の終の棲家を見つけなくてはいけない。アメンは展望台の床をすべてガラスにする補修工事が終わったばかりのスペース・ニードルがランドマークのシアトル・センターのスタッフと話し合っている最中だと言う。「このブロンズ像を設置できるスペースがどこかにあるか探している最中だ」とアメン。「俺はもともと、アイツが育ったベインブリッジアイランドの森の中に置くので大満足だったけどね」と。


パール・ジャムのメンバーがライブ中に壊した楽器。

これはウッドの母親トニーにとっても嬉しいことのようだ。彼女は展覧会場でブロンズ像を初めて見て「今日、あとで泣いてしまうと思います」と話したという。今でもベインブリッジアイランド在住の彼女は、パール・ジャムのメンバーたちが3年前に寄贈したトレーラーハウスに住んでいる。彼女はブロンズ像を「あの島に置くべきです」と言う。それもベインブリッジの「タウン&カントリー」というスーパーマーケットの横に。「いつも彼を迎えに行くのがそこでした。『母さん、車で迎えに来てくれる?』と言って、あのスーパーの前で待っていたんです。当時の彼は本当に可愛らしかった」と、トニー。

数日前のことらしい。トニーの知り合いが着古されたマザー・ラヴ・ホーンのTシャツとアンドリューを描いた絵をトニーにくれたと言う。「その絵の息子を見た途端、心が痛み始めて『ああ、あなたがまだ生きていてくれたら。あなたに会いたい』と言ってしまいました」。

「そしたら、彼があそこにいたのです」と、トニーが続けた。「アンドリューは絶対にあのブロンズ像を気に入るはずだし、ありがたく思うはずです。今、天国は大騒ぎだと思いますよ。アンドリューが『ジミ、俺にも像ができたぞ!』って触れ回っているに違いありません」。

「パール・ジャム:ホーム・アンド・アウェイ」の展示写真はこちら(写真11枚あり)

Translated by Miki Nakayama

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