登坂広臣『FULL MOON』レビュー「コンセプチュアルなソロ活動の集大成」

8月18日から全国ツアー「HIROOMI TOSAKA LIVE TOUR 2018 “FULL MOON”」がスタートする登坂広臣(Photo by Tsutomu Ono for Rolling Stone Japan vol.4)

三代目 J Soul Brothersにおける双頭ヴォーカルでの存在感はもちろん、主演映画の公開も控える俳優としての躍進、さらにはオリジナル・ブランドとなるCLAIR DE LUNEプロジェクトの展開など、マルチプルな活躍を見せてきた登坂広臣。そこに加わったソロ・アーティストという新たな顔は、昨年7月の配信シングル「WASTED LOVE」を契機に、トロピカル・ハウスの「DIAMOND SUNSET」やCRAZYBOYを迎えたトラップの「LUXE」といったEDMオリエンテッドなサウンドを軸に、グループとはまた違う角度から彼の創造性に光を当ててきた。

今市隆二の『LIGHT>DARKNESS』から一週間後にリリースされたコンプリート・アルバム『FULL MOON』は、月光をシンボリックなキーワードとするソロ・プロジェクトの世界観を現時点で総括した、文字通りの満月のような一枚となっている。先行配信されたシングル群に加え、グループの最新作『FUTURE』のDISC-3で初披露されたメロディックな「Smile Moon Night」、バラードの「END of LINE」、Faisのダンス・ヒットを日本語でカバーした「HEY / HIROOMI TOSAKA feat. Afrojack」の3曲、さらにアルバム用のエクスクルーシヴもふんだんに交えた全14曲。そこでは三代目JSBでの姿はもちろん、ここまでのソロで挑戦してきたスタイルにすら縛られない自由で幅広い表現が獲得されている。

ここに至るまでのソロ曲はすべてAfrojackがサウンド・プロデュースを統括することでプロジェクト作品としてのトータリティを構築してきたが、アルバム用の新曲群では多様なクリエイター陣と自由にコラボレートしており、一歩踏み出した印象を受ける。明快に〈R&B〉をテーマに掲げた今市隆二と比べると、登坂のソロ活動は三代目JSBとの音楽的な差違をどう打ち出すかも大きな要点になっていたはずで、つまりは先行曲によってソロ・シンガーとしての独自性が確立された自覚と自信こそが今回のバラエティに繋がっているのではないだろうか。

神秘的でナイーヴな序曲「INTRO 〜WAKE THE MOON〜」に続く表題曲「FULL MOON」から妖しく濃密な歌世界に引き込まれる。初の手合わせとなるSUNNY BOYは、三浦大知やBTS、SKY-HI、安室奈美恵らを手掛け、EXILE TRIBEとも縁深いヒットメイカー(先日はSALUの「Good Vibes Only」を送り出したばかりだ)。ここでは重厚なシンセを用いつつ歌心を活かしたメロディアスなベース・ミュージックに仕立てている。SUNNY BOYはもう1曲「One Last Time feat. BENI」も手掛けており、こちらは大らかな旋律と温かい浮遊感に包まれた直球のラブソング。デュエット・パートナーを担うBENI(彼女の最新シングル「Chasin’」にもSUNNY BOYが関与)の可憐な存在も作中に彩りをもたらすものだろう。

先行曲のような直球のフロア・トラックでないのも新曲群に共通するところで、YVES&ADAMSによるフューチャリスティックなトラップ・ソウル「EGO」も、レゲエっぽく響くウォーキング・テンポに乗せた絶妙なヴォーカリゼーションが小気味良く、全体の聴き心地は実にユニークでハイブリッドなもの。EDMライクな質感を活かしたハイブリッドなアレンジという点では、T.Kuraプロデュースによるカリビアン風味のアップ「HEART of GOLD」も個性的な仕上がりで、トロピカル・ハウスのシンプルさをエレクトロな音色で煌びやかに装飾したような作りが興味深い。

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