現代の音楽シーンにためらうことなく飛び込んでゆき、ポップミュージックでもヒットを連発したフランクリンは、ジョージ・マイケルやエルトン・ジョン、ホイットニー・ヒューストンらとコラボレーションし、次々シングルをリリース。自分に影響を受けた若手アーティストと共演するという方程式で成功を収めた。1998年には、彼女を心から敬愛するローリン・ヒルが「A Rose is Still A Rose」を彼女のために作曲、プロデュースしている。
晩年のフランクリンはしばしば健康上の問題に悩まされ、レコーディングは一向に進まず、単発気味になった。2006年にレコーディングを始めた『A Woman, Falling Out Of Love』が、最終的に自身のレーベルからリリースされたのは2011年のことだった。2010年に予定されていたコンサートが中止されると、彼女が膵臓ガンを患っているらしいとのうわさが広まった。フランクリン本人はがん闘病接を否定し、腫瘍の摘出手術を受けたことを明かした。2018年にも医者から2か月間の安静を勧告され、コンサートを中止した。2017年11月、エルトン・ジョンが主宰する毎年恒例のエイズ基金コンサートが、フランクリン最後のパフォーマンスとなった。
それでも、フランクリンの声のパワーは決して衰えることはなかった。2014年には、アデルの「ローリング・イン・ザ・ディープ」をまるで最初から彼女の持ち歌だったかのようにカバーし、自身100曲目のR&Bチャートインを果たした(最後のアルバムとなった『グレイト・ディーヴァ・クラシックス』に収録)。「アデルは唯一無二のアーティストね」と、2012年のローリングストーン誌とのインタビューで語るフランクリン。「彼女の歌詞が大好き――60年代のキャロル・キングを思い起こさせるわ。アデルのほうがずっといいけどね!『We coulda had it all (2人ならすべて上手くいくはずだったのに)』のくだりとか。本当、アデルよね!」 2009年、フランクリンはバラク・オバマ前大統領の就任式でもパフォーマンスを披露した。彼女が音楽で多大な影響を与え続けてきた市民権運動がついに結実した瞬間だった。「自分自身を音楽で表現するといった点で、彼女に敵う人はいないわ」と、メアリー・J・ブライジは2008年のローリングストーン誌とのインタビューで語っている。「アレサの存在が、私たち女性を歌へ導いたのよ」