フランクリンと彼らは互いに崇拝し合う関係だった。ビートルズが活動中に彼女がカバーした「レット・イット・ビー/Let It Be」や「Eleanor Rigby(原題)」も、解散後にカバーした「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード/The Long and Winding Road」にも彼女なりの解釈がしっかりと込められていた。フランクリン版「レット・イット・ビー」は、彼女の手によってチャーチオルガンと聖歌隊のバックコーラスが入ったゴスペルソング風にアレンジされており、それがユニークで情熱的な彼女のパフォーマンスを支える形になっていた。
「Eleanor Rigby」はオリジナル曲では三人称だったストーリーを一人称のゴスペル的なノリノリの楽曲に大改造し、粗いカッティング・ギターと陽気なドラム・ビートの上でフランクリンが「All the lonely people, where do they all belong」と大きな声で問いかけていた。当時、この曲はライブ演奏のセットリストに組み込まれていて、ライブ・アルバム『Aretha Live at Fillmore West(原題)』でも、彼女の卓越したパフォーマンスが確認できる。
フランクリン版「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」は、1972年のアルバム『Young, Gifted and Black』に収録されており、これも陽気でゴスペル調のアレンジが施されていた。「レット・イット・ビー」でフィル・スペクターが施した感傷的なアレンジをこの曲では避けて、前進するグルーヴと躍動感のあるフランクリンのボーカルを前面に押し出したアレンジになっている。