K-POPはいかにして世界制覇を成し遂げたのか?

アオキは、K-POP革命はストリーミング革命なくして実現しなかっただろうと指摘する。「ストリーミングが出現したおかげで、今のファンは大きな影響力を持つようになった。だからこそBTSがセンセーショナルな現象となったんだ。つまり、ファンが彼らを現象にしたってこと。かつてのパンクやハードコアのアンダーグラウンド・カルチャーと同じ感じでね」と、アオキ。そして「そこでBTSが飛び出したってだけ。それに、とにかくファン主導が大騒ぎしているから、これ以上の広がりはないだろうね」と続けた。

K-POPコミュニティの中でも最大級のSoompiは1998年から活動を続けていて、このサイトに集うファンの大多数は韓国人ではない(彼らはKCONに参加する熱烈なファンでもある)。しかし、現在ユーザー数2200万人で、その数が急激に増えているこのサイトのユーザーたちは、何時間もかけて歌詞を翻訳し、複雑なことで有名なMVを分析している。K-POPのMVは殺人、家族の裏切り、夢の果て、傷心、タイムトラベルも含む、さまざまなプロットが散りばめられているのだ。「その多くが視覚に訴える力が強い」と、Soompiを所有する企業のコミュニティ・マネージャーを務めるクリスティン・オーツが説明する。「服装やMV、精巧に作り込まれたストーリーラインを通して、ファンは自分の考えや思いがどんどん内面に向くような体験をすることができるの。これは西洋の音楽では滅多にないことね」と。また、韓国語を理解するファンはK-POPアーティストのインタビューを解読して翻訳する。そのため、初めて接するにしても、言葉の壁はそれほど高くない。「韓国ではすでにK-POPが文化の一部になっていて、彼にとって韓国語は母国語よ」とオーツ。「一方、アメリカでのK-POPは自己発見のプロセスとなるため、その点でファンはかなり興奮してしまう。ユーザーが最初にお気に入りの曲を1曲見つけると、その後は勝手に深く掘り下げるようになるわね。アメリカ人アーティストたちからは得られないようなモチベーションとファン同士の交流が存在するの」と続けた。そして彼女によれば、ファンの中には最終的に韓国語を学び始める人もかなりいると言う。


2016年のアジア・アーティスト・アワーズに到着してポーズを取る韓国のガールズグループBlackpink。

Soompiのユーザーはほとんどが若い女性だ。2017年、アメリカン・ミュージック・アワードでK-POPグループとして初めてパフォーマンスするBTSがロサンゼルスに到着したとき、空港に集まった大勢のファンがブリティッシュ・インヴェイジョンを思い起こさせる騒々しい出迎えをした。「K-POPのグループは男女とも当時のビートルズと同年代なわけだから、これは音楽の歴史に於ける必然と言えるでしょう」とキロレン。そして、K-POPは「継続的に起きる音楽の乾き」にすんなり浸透し続けていると、彼女は付け加えた。


BTSの記録破りの大成功にもかかわらず、アメリカのラジオ局はK-POPを通常のローテンションに入れることを今でも躊躇している。アルファ・メディアのベッカー曰く、彼の会社はその状況をどこで、どんなふうに変えられるのかを現在検討中だという。「英語じゃないというだけで退けることがよく起こる」と言って続けた。「私が仕掛けたチャレンジというのは、昨年最もラジオで流された曲が『デスパシート』なら、英語以外の歌詞の曲をもっと流してみたらいいのではないか、ということだ」と。(2018年初頭、「デスパシート」はダイアモンド認定された初のラテンポップソングとなり、Spotifyでは10億回以上再生されている。) その一方で、K-popにとってアメリカだけが唯一のターゲット国というわけでもないようだ。これはスーパー・ジュニアが放ったK-POPとラテンのクロスオーバー曲がヒットしたことからも明らかである。「リスナーは世界規模で音楽を俯瞰することを望み始めた」と前出のKRBEのホイットルが言う。「番組制作者として、現在の地球は前よりも小さくなっていることを実感し始めている」。

Translated by Miki Nakayama

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