英アビー・ロード・スタジオ大改革、リブランディングで若者世代を新規獲得

2010年、所有に関する大改革があり、ユニバーサル・ミュージックが運営を引き継ぐことになった。同年、アビー・ロードはイングリッシュ・ヘリテッジ認定の建造物となり、全体的な改造が禁止されたため、現在もこれまでと同じ外見を保っている。スタジオ・ワンがあるフロアはビートルズが「愛こそすべて/All You Need Is Love」の音楽クリップを撮影したときやピンク・フロイドが車をいじる車庫として使った当時と同じで、スタジオ・ツーにはボロボロになったバッフルが40年代からずっと残っている。廊下には相変わらずオーダーメイドのヴィンテージギアが所狭しと並べられていて、サイエンスフィクション的な雰囲気を醸しているのだ。そして、地下室の古風なダイニングルームも健在で、今でも作業の合間にアーティストたちが休憩をとっている。つまり、時代と共に唯一変化するのがスタジオの使用者というわけだ。

最近行われたスタジオの内覧会は、一般公開されないプライベートなものだった。そこで、ブランドとマーケティングの責任者マーク・ロバートソンが、スタジオスタッフがこのブランドのポテンシャルをどのように認識しているかを説明した。スタッフはスタジオの顧客ベースをピラミッド状にして比較することから始めてみたという。ピラミッドの最下層(※最も数が多いということ)がプロフェッショナルたち。つまり大物アーティスト、映画音楽の作曲家、交響楽団など。その上がホームスタジオを持つミュージシャンたち。つまりNovelistのように仕上げ作業を行う場所としてアビー・ロードを使う人たちだ。そして、最も少ないのが、アビー・ロードでレコーディングしたことのあるアーティストたちのファンという結果になったのである。これを俯瞰して見たとき、彼らは自分たちの認識に歪みがあると気付いたのだ。


1967年、アビー・ロードのビートルズ

「少しばかり高嶺の花で、簡単には手が出せなくて、お高いイメージというのがアビー・ロードにつきまとっていた」と、フロントルームでロバートソンがローリングストーン誌に説明してくれた。このフロントルームこそが新しいスタジオで、マンハッタンのアパートと同じ位の広さで、ロジャースがロンドンの居場所として使っている場所だ。「ブランドとして、私たちには信頼性と歴史があると考えていた。ここでは常に革新的なことを行ってきた。ステレオ・サウンドなどはここで生まれたものだよ。それに素晴らしい才能を持った人々がここに集まってくる。そこで私が考えたことは、もっとオープンになって人間味あふれるアビー・ロードにすることだった」。

Translated by Miki Nakayama

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