マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン、日韓ライブ独占密着レポート

その2日後、8月17日(金)は、幕張メッセにて開催されたSONIC MANIA 2018(以下ソニマニ)に出演。コーネリアスや電気グルーヴ、ナイン・インチ・ネイルズらと同じステージに立った。

マイブラの出番は深夜1時45分からで、セットリストは単独公演のダイジェスト版といった感じ。新曲は「New Song 1」のみで、それを除けば「I Only Said」で始まり「You Made Me Realise」で締めるという流れ自体、ほぼ2013年から変わっていない。もっといえば、ステージの両端にケヴィンとビリンダが立ち淡々とギターを弾く一方、中央のデビーとコルムが激しいアクションでステージを彩るというフォーメーションも90年代のままだ。逆に、今回のツアーから大きく変わったのは、バックスクリーンに映し出される映像である。以前よりも抽象的でカラフル、サイケデリック色が強くなったこのVRを手がけているのは、ジェームズ・マーリー。マイブラとは20年来の付き合いであり、ダイナソーJr.やシガー・ロスなどの映像も手がけている人物だ。


Photo by Takanori Kuroda

ヒップホップの影響を強く受け、ギターのアームを持ったままギターを弾く「トレモロアーム奏法」を初めて導入した「Slow」を経て、めくるめく高揚感が押し寄せる「Soon」のイントロが流れ始めると、歓喜と同時に「そろそろ終盤だな……」といつも寂しさがよぎる。ケヴィンとビリンダによる掛け合いヴォーカルと、ヘッドバンキング必至のキメが痺れる「Feed Me With Your Kiss」を演奏し、ついにラスト曲「You Made Me Realise」へ。10分近く引き伸ばされた間奏のノイズパートは、まるでジェット機の噴射口に頭を突っ込んでいるような、それでいて母親の胎内で羊水に浸かっているような、不思議な心地よさを感じる時間だ。ケヴィンがデビーに目で合図を送り、彼女がベースを振り上げたのをきっかけに再び曲に戻ると、会場からは大きな歓声が沸き起こった。

こうしてマイ・ブラッディ・ヴァレンタインのアジア・ツアーは全て終了。ケヴィンは御茶ノ水の楽器ショップ街でエフェクターを漁るなど、思い思いのオフを過ごして帰途についた。

来日中に筆者が目撃したエピソードで印象に残っているのは、単独公演終了後のこと。会場の外で2時間近く待っていた10数人のファンを見つけた4人は、車を停め、降りて一人ひとりのサインや握手に応じていた。ロックスター然としたところが一切なく、常にファンと同じ目線でいるところも彼らの大きな魅力の一つといえるだろう。

ソニマニのバックステージで受けていたTVのインタビューで、「7、8曲入りのミニ・アルバムを、うまくいけば10月くらい、いや11月末かな。年内には出すよ」と話していたケヴィン。それを携え、来年も勢力的にツアーを行う気でいるようだ。そのときはまた、日本に来てくれることを心から願う。




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