BTS、全米進出の舞台裏:2017年LA滞在記

カリフォルニア、シカゴ、ニュージャージーでのアリーナ公演がソールドアウトになったことを受け、BTSは2018年に大掛かりなアメリカ・ツアーを計画している。彼らは前例のないことをしているのだ。PSYとは異なり、彼らの成功のきっかけは物珍しさが受けたヒット曲ではない。彼らの曲はアメリカのチャートをゆっくりと上昇し、今では順位が落ちる気配がない。過去に英語のアルバムを作る考えを却下したとは言え、RMは2017年にフォール・アウト・ボーイのリミックス、ワーレイとのコラボで英語のライムをドロップした。



Photo by Brian Guido

午後1時半になり、キンメルの番組への出演準備をする時間だ。私はダンス・スタジオからホール、そして楽屋の近くまでBTSの後ろをついて行った。折りたたみ式テーブルの上には所狭しとシルバーのリング、派手なネックレス、耳たぶからぶら下がるタイプのイヤリングが置いてある。ここから一つ選ぶのだ。床に置いてあるジップロック付きのビニール袋には、メンバーが使用する同じ種類のPUMAのサンダルがたくさん入っている。ヘアを直して服装を整えると、彼らは無言で4台のエスカレードに分乗した。

ハリウッド・ブルーバードを通って小道に入ると、キンメルの野外撮影所と野外ステージに到着した。そこには1000人を超える熱狂的なBTSファンがいた。私たちのクルマが着いた途端に歓声が爆発した。彼らはそこで何時間も待っていたのだ。キンメルの音楽プロデューサーであるマック・バーラスが後で教えてくれたのだが、5人のティーンエイジャーが、この撮影所前の通りで、寝袋で寝ながら二晩過ごしたらしい。

出演者の控室に入ると、彼らはやっと一息つくことができた。SUGAとRMはバナナを食べる。JINはNintendo Switchで遊ぶ。JUNG KOOKとJ-HOPEはソファの上で眠そうに互いに身体を預け合っている。Vは床に横になりマッサージ師のアシスタントに首筋を調整してもらってからソファに座って「カープール・カラオケ」をストリーミングでチェックする。午後4時、プロデューサーがスキットに出演するARMYの母親2人を連れてくる。彼女たちはまだ列に並んでいる娘たちにFaceTimeで楽屋にいることを告げた。娘たちが楽屋に来たとき、彼女たちと少し話してみた。2人ともYouTubeでBTSを見つけたと言う。24歳のアドリアナは韓国語を「ゆっくりと、でも確実に」独学で覚えている。メンバーの声で発した言葉を理解したいのだ。18歳のローザは「音楽を聴くときに言葉は壁にならない」と強調する。


Photo by Brian Guido

午後6時20分、BTSがステージに向かう。ステージ裏に聞こえてくる客席の歓声は、ジェットコースターに乗って騒いでいるかのようにテンションが高い。白髪交じりのスタッフが私の横を通りながら、おどけた笑顔で「正気じゃない」とつぶやいた。彼らが全6曲のセットを圧倒的なパワーでパフォーマンスするのを舞台袖で見ているうちに涙が出てきた。「Where Are Ü Now」に似ている「Save Me」では、ファンがK-POPではお馴染みの“ファンチャント”(ファンによる合いの手)を寸分違わずに入れてくる。メンバーそれぞれの本名を完璧な順番とリズムで歌の間に挟むのだ。私の耳に音楽はほぼ聴こえない。そのため、パフォーマンスがもうすぐ終わるという段階で初めて、BTSがバックアップのヴォーカル・トラックを使っていないことを知る。アメリカやイギリスのボーイズグループは普通使う。つまり、BTSは常に激しく踊りながら、同時に歌い、ラップするのである。


Photo by Brian Guido
午後7時過ぎにパフォーマンスが終わった。ヘトヘトのJ-HOPEがアスファルトの地面に倒れ込む。大きな呼吸で彼の胸が上下に大きく揺れ、目は見開いている。30秒後、彼は立ち上がり、他のメンバーに追いつき、控室に続く廊下の向こうに消えて行った。そして、彼が最後の角を曲がったとき、「キャー!  J-HOPEが私を見た!」という大きな叫び声が上がった。


Photo by Brian Guido

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本記事は「Rolling Stone Japan vol.02」に掲載。
未公開カットなど多数掲載しているので是非チェックして欲しい。
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Translated by Miki Nakayama

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