学校への賄賂は当たり前…タイ映画史上1位の作品に込められた教育システムへの疑問

ーなるほど。ちなみに脚本の3人でアイデアを出し合うなかで、カンニング手法のボツネタなどもたくさんあったのでしょうか?

プーンピリヤ:たくさんのリサーチをするなかで結局使われなかったアイデアとしては、小さい紙に答えを書いてシャープペンシルに入れる、とか、時計の下に書いて渡す、とか。いろいろありますね。でも結局、最終的にあのやり方になったのは、映像的に見ていていかにワクワクするか、ということが基準でした。たとえば消しゴムに答えを書いて靴に入れて動かすと、その動き自体が映像の中で効果を発揮して、いいですよね。ピアノコード、バーコード、いずれも3人で考えたのですけど、ちょっとこれまでに誰もやっていないような、人と違うものがいいなということで。


主人公リンと、天真爛漫なお金持ちの子女グレースは友人となりやがてカンニングを引き起こすことになる。(©GDH 559 CO., LTD. All rights reserved.)

ーもう『バッド・ジーニアス』の脚本チームはどんな方法でもカンニングできてしまいそうですね……(笑)。

プーンピリヤ:ははは(笑)。ちなみにピアノコードについては、本格的に採用する前に実際のカメラリハーサルをやってみています。ヒロインのリンを演じたAokbab(チュティモン・ジョンジャルーンスックジン)、彼女に実際にピアノを練習してもらい、指を動かしてもらって、自分はカメラ位置から見てみました。そして実際にも、解読できたんですね。もちろん映画の中ほどスムーズには見えていないのでそこは映画のマジックともいえますが(笑)。実際にもよーく見ると、サインがわかります。


カンニングシーンのメイキングでサインの動作を確認中の様子。(©GDH 559 CO., LTD. All rights reserved.)

ーなるほど! びっくりするほど引き込まれる勢い溢れる作品で、まだまだ細かく聞きたいことはありますが、サスペンス要素も多いですしこれ以上は“ネタバレ”にはならないようにしますね。『バッド・ジーニアス』は映像もとてもスタイリッシュで、本当に引き込まれる要素が満載でした。映画の技術的な面でもよいのですけども、撮影にあたり重視したことだったり、カンニングというテーマ以外で既存のタイ映画を変えるという意味を込めてもしも大切にしたことなどあれば、ぜひお聞かせください。

プーンピリヤ:今作は各部署のスタッフとのコラボレーションがうまくいったんだと思います。観客は映像を見て、「あ、映像がきれいだな」と感じると思いますけども、実はそれはカメラマンによるところだけじゃないのです。もちろん、カメラマンはクールなフレーミングを決めるんですけども、それ以外にも、アートディレクション、衣装、ライティングそれぞれすべてがよくなかったら、こんなに美しくは見えないのです。なので、何にせよすべてのスタッフの仕事がとてもよかった。監督は、彼らが提案してきたものを選んだだけですから。


主人公の天才少女を演じたAokbabことチュティモン・ジョンジャルーンスックジンは、本作での評価を得て、今アジアで最も注目される若手俳優のひとりとしてスターダムを駆け上がっている。(©GDH 559 CO., LTD. All rights reserved.)

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