万能型エンターテイナーとして覚醒、MAXが語るアリアナ・グランデからの学び

マックスは16歳の頃前述の『13』に出演すると、その後『Law & Order:性犯罪特捜班』への出演を皮切りに『CRISIS ~完全犯罪のシナリオ』、『How to Rock』といった人気作品に俳優として次々に出演。2015年に公開されたビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソン公認の自伝映画『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』ではヴァン・ダイク・パークス役を演じた。とはいえ、傍から見れば順風満帆に思える俳優業をこなす中で、「本気で音楽をやりたい」という思いは日々増していったそうだ。その気持ちが抑えきれなくなった彼は、本格的にミュージシャンの道を歩みはじめる。

「それまで僕は、周りの友達がミュージシャンとしてキャリアを築いていくのを見ながら、それと自分とを比較していたんだと思う。アリアナ・グランデがいい例だよ。彼女は素晴らしい才能の持ち主で、あるタイミングで『音楽に人生をかけよう!』と決断したことで、一気に人気者になった。過去の僕は、そんな友達の成功を見て『昔は同じ場所にいたのにな』と落ち込んだりしていたんだ。でも結局、アリアナにはアリアナの、僕には僕のジャーニーがあるって気づいた。それを教えてくれたのが、3年前に付き合いはじめた僕の奥さんだね。彼女と知り合って、僕は周りの目を気にしなくなった。『自分たちが楽しんでいれば、人にとやかく言われたっていいじゃないか』って、本当の自分でいられるようになったんだ」



彼の代表曲として2016年にシングル・リリースされた「ライツ・ダウン・ロウ」は、この奥さんのために書き下ろした楽曲で、MVには実際に彼女が出演している。また、彼はそれに先がけて2015年にフォール・アウト・ボーイのピート・ウェンツらが運営するレーベルDCD2 Recordと契約し、フォール・アウト・ボーイとウィズ・カリファのツアーにも帯同。今回日本デビュー・アルバムとなる『ヘルズ・キッチン・エンジェル』を完成させた。

アルバムを聴いてまず印象的に感じるのは、ヴィンテージ感溢れるソウル・ミュージックを基調にしながらも、楽曲ごとに幅広い音楽性が収められていること。80年代のプリンスやマイケル・ジャクソンを思わせるきらびやかなポップ・ソウル「ヘルズ・キッチン・エンジェル」、ホーンが印象的な序盤を経てサビで低音の効いたドロップが顔を出す「ジバリッシュ」、トラップ的な要素がややアレンジされて取り入れられた「ロング」、アコギの音色が穏やかな雰囲気を醸し出す「ライツ・ダウン・ロウ」、ダブステップのワブルベースを取り入れた「10 ヴィクトリアズ・シークレット・モデルズ」、そして作品中で唯一彼がひとりで作詞作曲を担当した「ロスト・マイ・ウェイ」まで、どの楽曲もクラシックなソウル・ミュージックと現代的な要素がひとつになっている。



また、華を添えるゲスト陣や楽曲の共作者/プロデューサーの顔ぶれも多種多様。2曲目「ジバリッシュ」にフーディ・アレン、3曲目「ロング」にリル・ウージー・ヴァート、8曲目「マグ・ショット」にシラー、そして「ライツ・ダウン・ロウ」のリメイク版にナッシュがゲスト参加し、プロデューサー/楽曲の共作者としても近年の米メインストリーム・ポップを手掛ける才能たちやフォール・アウト・ボーイのパトリック・スタンプ、EDM系のプロデューサーなどが多数参加している。ひとつの楽曲に何人ものクリエイターがかかわる制作プロセスは、現在のポップ・シーンを象徴するものだ。

「違うアーティストとコラボレーションをすることで、自分が気づいていなかった自分に気づくことができると思うんだ。リル・ウージー・ヴァートは、声をかけた頃はまだ全然有名ではなかったから、『もっとビッグなラッパーにしろよ』とも言われたよ。でも、僕は彼の音楽やラップが好きだったから、お願いして参加してもらうことにした。その後彼はヒットを飛ばして人気者になったし、『自分がいいと思えるもの、楽しいと思えることを信じるのが大事だ』と改めて思った,フーディ・アレンとは、彼の最初のツアーに参加して以来の仲。ナッシュは僕が奥さんに向けて作った「ライツ・ダウン・ロウ」のバックストーリーを伝えたら、自分の彼女に思いを馳せながらラップを考えて送ってくれた。相手のこれまでになかった魅力を引き出したりできるのも、コラボレーションならではだね。パトリック・スタンプと共作した「10 ヴィクトリアズ・シークレット・モデルズ」は、彼と話をしていたときに、僕が自分の奥さんについて『電車にヴィクトリアズ・シークレットのモデルが10人乗ってきても気づかない(=それぐらい夢中)』と話したことがきっかけでできた曲なんだ。自分では忘れていた言葉だったけど、聞いた彼が『面白いな』と思って曲が生まれたんだ」

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