『絵の具箱』は、バンド仲間から“寡黙で引っ込み思案”と言われる男の、音楽的なパーソナリティを垣間見ることのできるレアな楽曲だ。もともとバレット作のシングル『Apples and Oranges』のB面としてリリースされた同曲は、後にコンピレーション・アルバム『ピンク・フロイドの道(原題:Relics)』に収められた。憂鬱でサイケな出来事を歌った曲で、ライトが居心地の悪い酔っ払った夜を思い返しながら「でも俺がいるべき場所は、はるか遠くだった」と歌っている。
3. 『シーソー(原題:See-Saw)』(1968年)
ライトが単独で楽曲の製作者としてクレジットされているのは、ピンク・フロイドの全217曲中わずか10曲しかない。バンド初期のライトは、メイスンが“正にバレット流の哀愁を帯びた曲”と呼ぶ雰囲気の楽曲を好んだ。バンドのセカンド・アルバムで、バレットが参加した最後のアルバム『神秘(原題:A Saucerful of Secrets)』には、その代表的な2曲が収録されている。『シーソー』は、子ども時代の歪んだ至福の時を描いた幻想的なバラードで、ライトがリード・ヴォーカルを務め、ピアノ、ファルフィッサ・オルガン、サキソフォン、メロトロンも弾いた。また、ギルモアとプロデューサーのノーマン・スミスが物憂げなバッキング・ヴォーカルを加えている。