中国が目をつけたノースカロライナの養豚業、悪臭は「お金の香り」

デュプリン郡で飼育される食用豚の排泄量は1日あたり1万5700トン。ニューヨーク市民が排出する約2倍の数字だ。(Photo by Grant Heilman Photography/Alamy)



ここ数年、海外のコングロマリットもまた、前述のプロフィールに当てはまる労働力を利用してきた。2011年に発行された米国農務省の最新統計によれば、国外の事業体が米国内に所有する農地は増え続けており、調査時点の広さはバージニア州とほぼ同じだった。以降、サウジアラビアとUAEの投資家が米中西部の1万5000エーカー(約61キロ平方メートル)の乾燥地帯を購入し、灌漑農業で栽培したアルファルファの干し草を家畜用として母国へ輸出している。スミスフィールド・フーズを買収したWHグループもそれに倣い、地元農場主たちに借金させて食用豚の飼育施設の建設を促進した。結果、WHグループは成長した食用豚というビジネスで最も利益の上がる部分を手にし、ノースカロライナの農場主には糞と、ビジネスに伴う全ての環境問題や人への健康被害が残されている。経済政策を扱うノースカロライナ・ルーラル・センターの上級研究員ジェイソン・グレイは、「“人は何も所有していないときは何でも欲しがる”というのが、農村経済の抱えるジレンマだ」と言う。


Photo by Rolling Stone

「ここにはほんの数分しか滞在できないの」とルネ・ミラーは、家族の墓地の前に駐車しながら言った。ミラーは、約1キロ先にある南北戦争時代から家族が所有していた農場で育った。農場を最新式にするために彼女の母親が融資を申し込んだが、ミラー曰く、銀行や米国農務省から却下されたという。ノースカロライナのアフリカ系米国人の農場主に対する同様の差別待遇は、日常茶飯事だ。現在はミラーの親族が葬られている土地の所有者だったミラーの家族は、テレビで広告を流していた“ミスター・キャッシュ”という業者を利用してローンを組んだ。農場が抵当流れになった後、1世紀以上の間ミラーの家族が所有した土地は、白人農場主の手に渡った。1999年、米国農務省は、あるノースカロライナの農場主が始めた10億ドル(約1130億円)規模の集団訴訟の和解に応じた。ローンを却下したのは農場主の人種がアフリカ系だったから、と認めたのだ。現在ミラーは、親族の墓参りにのみ農場を訪れることを許されている。

バンのドアを開けると、家畜と糞便の悪臭でむっとするような空気だった。臭いのもとは100メートルも先にある飛行機の格納庫のような形状をした6軒の金属製飼育施設で、そこには4300頭の食用豚が飼育されている。飼育施設の裏には、液状の豚の排泄物を溜める広さ3エーカー(約1万2000平方メートル)の肥溜めがある。ミラーは、祖母と母親の墓と、次に最近癌で亡くなった甥の墓石の上に溜まった松葉を払いのけた。墓の前にひざまずいた彼女は、「甥っ子の亡くなった原因は、あれだと思う」と私に向かって言った。

彼女の意味するものは、豚の糞尿のことだ。1日約30トンもの排泄物が、飼育施設のすのこ状になった床から肥溜めへ流れ出している。溜められた排泄物は、工業用の噴霧器で農作物の肥料として散布される。噴霧された排泄物は、ミラー曰く、田舎の道を超え、甥も一緒に住んでいた彼女の家に降りかかった。私の2度の訪問時、道路の向こうの敷地にある噴霧器は稼働していなかった。ミラーは家の窓にダンボールで目張りしていたが、悪臭は家の中でも強烈に感じた。

業界では飼育している豚の排泄物を“有機肥料”と呼ぶが、実際には死をもたらす可能性がある。豚を過密状態の飼育小屋に押し込めていると、病気がたちどころに蔓延するため、豚に抗生剤やワクチンを投与したり殺虫剤で対応している。それら化学薬品は糞尿として屋外の肥溜めに流出することになる。肥溜めからは、有毒な化学薬品、硫酸塩、ウィルス、抗生物質の効かない耐性菌(サルモネラ菌、レンサ球菌、ジアルジア等)が検出されている。豚の排泄物により、人々は悲惨な死に方をしている。2015年、アイオワ州に住むティーンエイジャーが、豚の排泄物から発生するメタンガス、アンモニアや二酸化炭素が原因で肥溜めに倒れ込んだ。さらに助け出そうとした父親もまた、排泄物の中で溺れてしまった。

Translated by Smokva Tokyo

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