モンティ・パイソンのエリック・アイドル、著作で60年代の喜劇界や音楽界を回想

モンティ・パイソンのエリック・アイドル(Photo by Ole Jensen - Corbis/Corbis via Getty Images)

モンティ・パイソン50周年を控え、メンバーのエリック・アイドルが自伝的な著書を出版した。

2〜3年前のことだ。エリック・アイドルはローリングストーン誌に「死後に出版する回想録を執筆している」と言っていた。その後、心境の変化があったという。「死後の回想録というのは出版前にギャラがもらえないことが問題でね」と、ロサンゼルスの自宅で電話取材に応えるアイドルが声色も変えず冗談を言う。米国現地時間10月2日、『Always Look on the Bright Side of Life: A Sortabiography(原題)』が出版された。「この本は、最初自分のために書いていて、書き終えたから売ったんだ」と彼。「そのほうが楽しめると思ったし、そうやって書いた本だと私が書きたかったことがより多く読者に伝わると思ってね」

現在75歳のコメディアンがこのアイデアを思いついたきっかけは、モンティ・パイソンの50周年記念の年である2019年が刻々と近づいてきて、来年いろんな場所で必ずや聞かれると予想される質問の類をすべて避けたかったからだ。しかしもちろん、そこにはテリー・ギリアム的なオチが待っていた。「結局、この本の宣伝でいろんなところに行って、避けようとした質問に答えることになるって気付いたよ」と言って、笑い声をあげた。

それでもなお、アイドルは彼の「自伝のようなもの」に、パイソンのメンバーたちとの仕事だけでなく、過去50年間にわたって温めた喜劇界や音楽界の著名人たちとの友情など、あらゆる話を詰め込んだ。登場する人物はジョージ・ハリスン、ロビン・ウィリアムス、デヴィッド・ボウイなど錚々たるメンバーだ。さらに映画『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』や『モンティ・パイソン/ライフ・オブ・ブライアン』、ビートルズのパロディ・バンドのラトルズ、王室的テーストのユーモアについての新事実など、その詳細が鮮やかに語られている。

「28年くらいになるけど、コンピュータの『回想録のため』と名付けたファイルに人生のあれこれを書きためていたんだ」と、アイドルが説明する。「前は『Say No More』というタイトルにするつもりだった」と、パイソンのスケッチで彼が演じた「ナッジ、ナッジ、ウィンク、ウィンク」の声色で言う。「つまり、物事が起きた当時に書いていた文章があって、これが思い出を記録するのに最適でね。こうやって残しておくと、あとで気取りながら自分の人生を振り返られるって寸法だ」

「3回目か4回目の草稿の頃には、この本が私の世代のついて書いた本になっていた。つまり、戦後に生まれて、食料が配給されていた50年代に育って、60年代になると文芸復興みたいなムーブメントを作り上げた世代」と言って続けた。「私の世代はロックンロールを生み出した。写真もテレビもそう。誰かをフォローして、何かを試すためには人を排除しなきゃいけない現代とは違っていた。私たちが活躍し始めた60年代は様々な方面で新たな物事が生まれ、その立役者たちはほとんど同じ時期に生まれていて、みんなある種のつながりを感じていたから(ミュージシャンやアーティストの)知り合いや友だちがたくさんいたんだよ」

当時を振り返りながら、アイドルは誠実さと冗談をひょいひょい行き来する。これはこのインタビューでも、彼の本でも説明されているが、彼が育った環境がもたらした副作用だという。

Translated by Miki Nakayama

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