11月に控えた米中間選挙、テキサス州では共和党候補で現職のテッド・クルーズ、民主党のベト・オルーク上院議員候補が激突。この度、テキサス出身の映画監督、リチャード・リンクレイターが、反テッド・クルーズの選挙用広告動画をウェブにアップした。 リチャード・リンクレイターほど芸術的にテキサスを描く人は滅多にいない。『バッド・チューニング』から『6才のボクが、大人になるまで。』そして『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』まで、彼が作った映画はすべてテキサス州での人生を描いている。それも、そこでの生活を本当に理解している人物の目を通した繊細なタッチとともに。 成功を収めた映画監督にもかかわらず、彼はハリウッドよりも自分の生まれ故郷ヒューストンから200マイル足らずにあるオースティンを気に入って住んでいる。リンクレイターの最新作『Tough as Texas(原題)』は30数秒の作品で、アメリカ現地時間10月8日の夜にウェブで公開された。撮影はワンカット、明らかにテキサスのコーヒーショップの店内、たった一人の出演者は明らかにテキサス人。テキサス人気質ゼロの男をこき下ろして笑っている。笑われているのはテッド・クルーズ上院議員。VIDEO 「誰かが俺んちの入り口に何かを置いてった。それには『テッド・クルーズ、テキサスと同じくらいタフだ』と書いてあった」と、この男は言う。「誰かが俺んとこのカミさんを犬って呼んでも、俺の親父がケネディ暗殺に加担してたって言っても、俺は怒らねえ。でも、あんたなら相手の胸ぐらに指を突きつけて、御大層な言葉で責めるだろうな。そうじゃなきゃ、人気のない裏山に引っ張っていってぶっ飛ばすんだろ、テッドさんよ。なあ、そうだろう、テッド」と。 この広告は反クルーズの政治行動委員会(PAC:個人の政治資金団体)が資金を出して作ったもので、今年の上院選挙戦でクルーズの対立候補であるベト・オルークの支援は受けていないが、そのシンプルさには美しさすら感じさせる。そして、対立候補よりも本物のテキサス人気質を持っていると主張するクルーズの選挙キャンペーンの痛いところを突いている。 世論調査でオルークの支持が上がると、クルーズは文化的な部分を強調するようになり、オルークがテキサスを「豆腐とシリコンとヘアダイの」カリフォルニアに変えようとしていると言い出したのである。さらに、オルークがテキサス州でのバーベキューを禁止するかもしれないという冗談まで飛ばした。しかし、テキサス人にとってアイデンティティを象徴するのは地元の料理ではなく、気骨であり、リンクレイターの広告が指摘している通り、クルーズは気骨のあるところをこれまで見せてこなかったのである。