ドレイク、ニッキー・ミナージュ、トラヴィス・スコット新作を理由に「2018年はラップからヒップホップへの揺れ戻しの年」と音楽評論家・田中宗一郎が分析する

ドレイク(Photo by Dave Simpson/WireImage)

音楽評論家・田中宗一郎と映画・音楽ジャーナリストの宇野維正が旬な音楽の話題を縦横無尽に語りまくる、音楽カルチャー誌「Rolling Stone Japan」の人気連載「POP RULES THE WORLD」。2018年9月25日発売号の対談では、アメリカで2018年の初週セールス最高記録を叩き出したドレイクの最新作『スコーピオン』について、田中が解説している。

田中によると、このアルバムは「これまでドレイクがずっと言われ続けた、『あいつはヒップホップじゃない、ポップなラップだ』という批判に対する回答」だという。

田中「今回の『スコーピオン』は2枚組って体裁じゃないですか。特にディスク2では大ヒットしている“In My Feelings”みたいに、もはや自らが火をつけたダンスホールじゃなくて、ニューオーリンズ・バウンスなんだ、っていうトレンド・セッターとしての側面を見せている。これは今まで通りのポップ・アーティストとしてのドレイクですよね。ただ一方でディスク1は、リアルなナラティヴをオネストに語るというラッパーとしてのドレイクを意識的に提示しようとしてる」



「でも彼は、自分から『ラップじゃない』と言ってる時期もありましたよね」という宇野からの指摘を受けて、田中はこのように続けている。

田中「そう。“Hotline Bling”(2015年のドレイクの大ヒット曲)はポップだ、だからグラミーのラップ部門にノミネートされるのはおかしいっていう。でも、だからこそヘッズからは叩かれてきたわけですよ。これまでも話してきたように、良くも悪くもここ数年の『ヒップホップからラップへ、ポップへ』という変化を誰よりも牽引してきたのはドレイクだった。でも、そんな彼もリアルなラッパーであることを証明しないといけなくなった。つまり、『再びラップからヒップホップへ』という振れ戻しがあったのが今年だった」

田中は「2018年はラップからヒップホップへの振り戻しの年だった」と位置付け、ドレイクの新作を理解するにはこうした文脈を踏まえておくことが重要だと語った上で、その後リリースされ、全米チャートNo.1を競い合ったトラヴィス・スコットとニッキー・ミナージュそれぞれの新作の内容と位置付けへと会話を進めていく。

Edited by The Sign Magazine

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