英ヴァージン・グループ創業者、「音楽フェス疲れ」の現代人を魅了する新イベント計画

フェスティバルが雨後の竹の子のように増えるに従って、出演者のラインナップが似通っている点を指摘する声も多く上がるようになっている(音楽メディアのピッチフォークは、ロラパルーザ、コーチェラ、ボナルーの3つのフェスティバル全部に出演したバンドの割合は、2005年が15%だったが、2017年では32%と倍以上になっていることを暴露している)。フェスティバルをハシゴするのが好きなファンにとって、フェスティバルごとの出演者と演奏曲の違いを見つけるのが困難になっているのだ。エミネム、ガンズ・アンド・ローゼズなどの人気アーティストたちは、フェスティバルでのヘッドライナー出演を一度限りの特別ライブとしてツアー日程の一部と捉えている向きもある。

音楽フェスティバルが劇的に増加した一因はストリーミング・サービスにある。つまり、ストリーミングによって実用的な音楽へのアクセス方法が豊富になり、音楽ファンがこれまで以上に個人的な音楽体験を求める方向へと向かったからといえる。しかし、いたるところでフェスティバルが開催される現在、熱く大騒ぎできるはずのフェスティバルが熱気のない型通りのものになりつつある。アーティスト個人によるフェスティバル開催も登場しているが、これですらコーチェラを模倣しているにすぎない。全部ではないが、ほとんどそうだ。

「ヴァージンはこれまで常に変化を起こしてきたし、業界に揺さぶりをかけてきた。だからヴァージン・フェストの企画実行チームがこのフェスティバルで同じ効果をもたらすと自信を持って言えるし、ラインナップの選択もその一部だ」と、ブランソンが言う。「ラインナップの監修はエキスパートに任せるつもりだが、自分のお気に入りは絶対彼らに伝えることにするよ」と。

2019年に初開催となるこのフェスティバルの出演者はまだ決まっていないが、ラインナップは「最新のヒットメーカー、新進気鋭のアーティストやネットで人気のアーティスト、そして我々が(イギリスの)音楽遺産を思い起こすアーティストなどになるだろう」と、フェルツが説明する。「既存のフェスティバルのラインナップを丸ごとコピーしたようなフェスティバルには絶対にしない。両日のヘッドライナーはみんなが知っているアクトになるだろうが、トップ40のスーパー・アーティストじゃない可能性もある。例えば、ブレイク前のダフト・パンクのようなアーティストだ」と語る。

2003年のコーチェラでイギー・ポップがストゥージズと再結成を果たして以来、フェスティバルの名物となったハイレベルな再結成が見られるかとフェルツに確認すると、彼は「100パーセントありえる」と答える。

当時はV96と呼んでいたVフェストを1996年にブランソンが始めたきっかけは、パルプのジャーヴィス・コッカーが2日間連続で2カ所の野外ステージでライブを行いたいと言ったことだった。ブランソンに当時最も苦労したことをたずねると、彼は即座に「近所の住人たち」と答えて笑う。「近所の住人たちはいつも大きな問題だった。とにかく、住んでいる人が少ない場所を探して、住人たちは無料で招待するようにするのが鉄則だった」と。

2006年、ヴァージン・モバイル・フリーフェストを開始した。これは2013年に終了するまでアメリカとカナダで開催されていたVフェストのスピンオフ・フェスティバルである。ブランソンにとってヴァージン・フェストは、特定の側面を残しつつ行われる過去の復興と呼べるものらしい。

「ヴァージン・モバイル・フリーフェストではフェスティバルに参加するためにボランティアをしなければいけなかった。この精神をヴァージン・フェストにも引き継ぎたいと思っている。楽しみながら良いことができると私は固く信じているから、会場がある場所のコミュニティや一緒にフェスに参加する人たちに優しくするとか何か、寛大さ・寛容さの精神を持ち込む方法をヴァージン・フェストでは実現したい」とブランソンは話した。

Translated by Miki Nakayama

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