著作権協会国際連合幹部が語る、ソングライターが抱える世界共通の悩みとは?

ーEUの法律がYouTubeに対してコンテンツのライセンスを義務付けたり、或いは少なくともアップロードされたコンテンツの監視を強化することを求めた場合、米国をはじめ世界各国はどのように対応するでしょうか?

ジャール: デジタル社会とオーサーの権利管理会社とを対立させたがる人もいるが、欧州議会で最も問題となったのは、アーティストやクリエイターとテクノロジーとを対立させる見方だった。実際に我々は皆、「この新たな問題に関する全ての取引や収益は簡素化したい」と思っている。「インターネット上の規制を求めることは表現の自由に反する」といった悪意ある見解を持つのは止めるべきだ。表現の自由が完全に失われた場合、アーティストやクリエイターが公正な報酬を得られない恐れがある。欧州議会で現在推進していることは、世界中のアーティストにとって非常にポジティヴなものとなるだろう。米国、アジア、アフリカのパブリッシャー、アーティスト、映画製作者、脚本家たちが、欧州の流れに続こうとしている。

オロン: 我々の組織には世界各国から239の団体が加盟しており、(著作権に関わる)世界中のお金の流れを把握できる。それによると、デジタル・サービスからの収入は、全て併せてもわずか13%にすぎない。例えばYouTubeなど、ユーザーがコンテンツをアップロードしているサービスからの収入は、非常にわずかだ。世界レベルで加盟団体に調査したところ、YouTube系のサービスからの収入はSpotifyやAppleと比較して4〜17倍も低かった。

ーCISACとYouTubeとの現在の関係はいかがでしょう?

ジャール: 個人的に(YouTube Music幹部の)リオ・コーエンとは連絡を取り合っているし、意見が必ずしも一致する訳ではないが良い友人になりつつある。彼のような人間が音楽業界自体から出てきたのは、良いことだ。彼には、“フォースのダークサイドから来た業界のダース・ヴェイダーだ”とジョークで言ったことがある。彼は、(YouTubeと我々との)橋渡し役として理想的なポジションにいる。

オロン: 我々はYouTubeをパートナーとみなしている。彼らはクリエイターを必要とし、クリエイター側も彼らを必要としているからだ。しかし我々が必要としているのは、公正な交渉を行うためのフレームワークだ。欧州における新たなルールが他国へも波及することを望んでいる。同ルールが適用されれば、YouTube側がライセンスの取得条件を提示するのでなく、他のサービス同様、交渉のテーブルにつくことになる。YouTubeはただのストレージ・サービスではなく、音楽サービスのひとつであることを認めざるを得ないだろう。最終的に彼らは今よりもっと収益を分配することになるだろうが、音楽業界にとってはとても重要で大きな貢献となる。

ーひとつの問題点として、あなた方が指摘した通り、アーティストとYouTube等のサービスが互いにいがみ合っていることに関して、多くの誤解があります。

オロン: クリエイター側が声を上げれば、意思決定者たちは耳を傾ける。ジャン=ミッシェルは、欧州議会で演説した。我々の考えに反対する者たちは、人々をけしかけて反対運動を起こさせようとしている。人々は何もわからないまま、ただ言われたことを信じて付いていっている。我々が人々に反対側を見せてやることが、とても重要だ。

ジャール: アーティストはただ過去にすがり、巨万の富の上にあぐらをかいているというイメージを持たれているかもしれない。名声を得たアーティストたちは自分のためでなく、次の若い世代のために闘っている。我々が適切かつ公正な収益を上げない限り、次のタランティーノや次のコールドプレイが出てくることはないだろう。

ー今対策を打たねば、ユーザー主体のコンテンツ・プラットフォームへの課金や著作権侵害の問題は将来的に悪化する一方だろう、と思う理由は何でしょうか? 何か新たなテクノロジーが出てくる兆しはないのでしょうか?

ジャール: 今我々が、デジタル時代の暗黒の時代にいることを理解していない人もいる。AIは、我々が思うより早く普及するだろう。すると、権利に関してもっと多くの解決すべき問題を抱えることとなる。我々は、アルゴリズムやAIにまつわる権利やクリエイティヴ・プロセスに関して準備をしておく必要がある。これから数年内に、AIがオリジナルの楽譜や書籍、文化的コンテンツを作成するようになるだろう。21世紀の大きな問題だ。今は全てのエンジニアが、ヨハン・セバスティアン・バッハのような、数学的楽曲とメロディの理想形に興味を持っている。現在我々は黎明期にあり、GoogleやMicrosoftなどが発展へ向けて努力している。

Translated by Smokva Tokyo

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE