ファン層を拡大するフェンダー社、CEOが語る「ギタービジネスの未来」

2015年よりフェンダーのCEOを務めるアンディ・ムーニー(Photo by Henry Diltz)

フェンダー社はこのほど「米国と英国におけるギター初心者の半数が女性である」という調査結果を発表した。同社CEOアンディ・ムーニーは、ローリングストーン誌に「老舗ギターメーカーとして将来へ向けた新たなファン層獲得への取り組み」について語ってくれた。

アンディ・ムーニーは、ドラムマシンやオートチューンに関してよく意見を求められる。「そんなものは“嫌いだ”と言わせたいのだろうが、私はなんでも好きだ」と、フェンダーのCEOは言う。ムーニーは、盛り上がりを見せるデジタル音楽が、ギター・ビジネスの脅威になるとは思っていない。フェンダーとしては、アコースティックやエレクトリックの将来は、ヒットチャートやステージとは大きく離れたところにあると考えているからだ。

ロックンロールのヒーローがStratocasterを下げてテレビに登場するような時代ではなくなった。現代のミュージックシーンにはギター中心の若いバンドが溢れている一方、次世代のエリック・クラプトンやチャック・ベリーが不在の状況で、楽器そのものは、もはやかつての名声を保ってはいない。ロックが勢いを失う中、フェンダーは初心者や女性など新たなマーケットに目を向けている。同社が行なった最近の調査によると、ギター初心者の半数が女性で、初心者のほとんどはロックスターを目指すのではなく、ただ自分の趣味や自己改善のひとつとしてギターを学びたいと思っているという。2015年にスコット・ギルバートソンから伝統あるギターブランドを引き継いだムーニーは、それ以前の数十年でナイキ、ディズニー、クイックシルバーを渡り歩いてきた。彼はローリングストーン誌とのインタヴューで、アコースティックのニューラインナップから現在開発中のソフトウェア・プロジェクトまで、フェンダーの新製品にかける大いなる夢を語った。さらに、グローバルに広がる同社の新たなファン層や、勝ち目はないと思われたウクレレという意外な路線の成功についても語ってくれた。

ーフェンダーはこのほど、「米国と英国におけるギター初心者の半数が女性である」という調査結果を発表しました。この結果は驚きだったでしょうか?

先週(2018年10月初旬)、上海と東京への出張から帰ったばかりだが、どのマーケットでも「自分のところは他とは違う」という。ところが実際に行って見てみると、「異なるどころか似ている点の方が多いじゃないか」と私はジョークを飛ばしたぐらいだった。英国の新たなギター購入者の50%が女性だという事実は、我が社の英国チームには驚きだったようだ。しかし、3年前に米国で行った調査でも、全く同じ結果が出ている。

“テイラー・スウィフト現象”という短期での盛り上がりがその50%を生み出した、とする考えもあったが、実際には違う。テイラーはどんどん変わっていき、かつてほどステージでギターをプレイしなくなっていると思う。しかし若い女性たちは今なお、ギターの新規顧客の50%を占めている。この現象は世界中へどんどん広がっているようだ。

ー英国や米国以外へも、ということでしょうか?

日本ではまだ調査を行っていないが、地元のチームによれば、新規顧客の60〜70%が女性だと試算している。日本では、ギターを中心としたガールズバンドの人気が高まっているからだ。SCANDALというバンドを見てみてくれ。おもしろいことに、米国で起きている現象と似ている。今のガールズバンドは、ヘヴィメタルからインディーロックまで何でもプレイする。ジャンルという意味では多種多様で、SCANDALもJ-popというくくりではない。

ー以前のインタヴューであなたは、「マーケットのライバルはもはや他のギターや楽器ではなく、レジャーマーケット全体やインターネットによって広がった娯楽社会だ」とおっしゃっていました。どのようにして余暇を過ごす人々にギターを持たせようとしているのでしょうか?

今回の調査でひとつわかったことは、ギターを習い始めて1年近く続いた人はギターを一生のものとする傾向がある、ということだ。我々が提供しているFender Playでは、毎月約6万5000人の生徒がレッスンを受けている。最近、年単位の料金を25%割引し、さらに、ユーザー登録している間は我が社の製品を10%割引で購入できる特典も加えた。すると最初の数日間で、驚くべきレスポンスを得られた。ピアノだろうがギターだろうが、楽器を学ぶには時間が必要だし、時間を割いてくれる人々に対してはできる限りのインセンティヴを与えてあげたいと思う。

またさらに興味深い結果は、ギターを学ぶことが社会的に大きなトレンドになってきていることだ。おもしろいことに、App Storeで最も人気の高いアプリの中には、瞑想系のアプリや自己投資につながるアプリがあることだ。できるだけ短期間でギターを学びたいと思う人たちもいる。一方で、さらにたくさんの人たちが新たなライフスキルとしてギターを挙げている。その多くは時間や経済的に余裕のある定年間近の人たちで、中にはかつて楽器を学んでいた人も、これから始めようという人たちもいる。

Translated by Smokva Tokyo

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