ジミヘン『エレクトリック・レディランド』あなたが知らない10のこと

1.  ホイットニー・ヒューストンの母親が「真夜中のランプ」でバッキングボーカルをしていた


『エレクトリック・レディランド』の中で最初にレコーディングされた内省的な曲「真夜中のランプ」はエクスペリエンスとしてモンタレー・ポップ・フェスティバルで扇動的なパフォーマンスを見せた3週間後の1967年7月6日と7日にニューヨークのメイフェア・スタジオで録られた。『アクシス:ボールド・アズ・ラヴ』の制作中に作られていた曲ではあるがその時はレコーディングされずこのアルバムに入ることはなかった。

「真夜中のランプ」のレコーディングはヘンドリックスがエンジニアのゲイリー・ケルグレンと初めて行ったレコーディングである。2人の息はすぐにぴったりと合い、ケルグレンはそのまま『エレクトリック・レディランド』の制作において主要な役割を果たすこととなった。ヘンドリックスとプロデューサーのチャズ・チャンドラーはこの曲への女性バッキングボーカルの採用を決め、ケルグレンの妻のマルタが後にシンガーとして大成功を収めることとなる当時まだ3歳のホイットニー・ヒューストンの母親、シシー・ヒューストン率いる4人組人気ヴォーカルグループザ・スウィート・インスピレーションズに声をかけた。ヘンドリックスのサイケデリックな音楽は、アレサ・フランクリン、ウィルソン・ピケット、ソロモン・バーク、ヴァン・モリソンのようなアーティストと仕事をしていたヒューストンたちにとっては慣れないものであったが彼女たちはそのチャレンジを喜んで受けたのだ。

「彼女たちは皆、違和感を抱いていたようだ。」と『At Last … the Beginning: The Making of Electric Ladyland』の中でチャンドラーは回想している。「「真夜中のランプ」に少し戸惑っていたけど彼女たちは曲を気に入っていたし、本当にいい仕事をしてくれたよ。」

2.    ヘンドリックスは「クロスタウン・トラフィック」で手作りのカズ―を演奏していた


1968年のローリングストーン誌のインタビューで「ワウペダルの良い点は音程がないところなんだ」とヘンドリックスは当時出たばかりの彼のお気に入りの製品について興奮気味に語った。ヘンドリックスはギター関連の新製品のサウンドの可能性を試すことを好む一方、必要に応じて物を自作することもあった。「ウォッチタワー」ではたばこのライターをスライドバーとして使用したり、「クロスタウン・トラフィック」では求めるバズ効果を得るためにくしとセロハンで作ったカズ―を吹いてギターのラインに重ねたりしていたのだ。

「「クロスタウン・トラフィック」をレコーディングしていた時、彼は表現したいサウンドを出すことができなかったようだ。」と『At Last … the Beginning: The Making of Electric Ladyland』の中でヘンドリックスの親友ヴェルヴァート・ターナーは語っている。「ジミが『くしをもってないかい?くしがほしい。あと誰かセロハンも持ってきてくれ。』と言ったんだ。くしの全体にセロハンを貼ってそれを吹けばカズ―のサウンドを得ることができる。「クロスタウン・トラフィック」のギターソロはカズ―のサウンドが重ねられていて、それはジミ本人がその‘くし’を使ってやっているんだ。そんなことをするなんてとても勇気があると思ったよ。ジミはそれが自分の求めるサウンドを生み出す可能性があれば身の回りのどんなものだって利用しようとしていたんだ。」


Translated by Takayuki Matsumoto

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