ジミヘン『エレクトリック・レディランド』あなたが知らない10のこと

3. ブライアン・ジョーンズは「ウォッチタワー」で(結局実現しなかったが)ピアノを弾こうとしていた



ヘンドリックスはよく自分のレコーディングに様々なミュージシャンを呼んでいて、『エレクトリック・レディランド』にもアル・クーパー、バディ・マイルス、そしてトラフィックの3人のメンバー(デイヴ・メイスン、スティーヴ・ウィンウッド、クリス・ウッド)などを含むゲストミュージシャンが参加していた。しかしザ・ローリング・ストーンズのあるメンバーが「ウォッチタワー」のレコーディング中にオリンピック・スタジオに現れた時、彼がその曲にピアノを加えるという希望に満ちた試みは彼が酔っ払い過ぎていたせいですぐに失敗に終わった。

「スタジオに寄ってピアノを弾こうとしてくれたのはローリング・ストーンズのブライアン・ジョーンズだけだったよ。彼は堂々とした態度で2,3テイク録っていたと思う。でもそれはボツになり、結局は彼なしの基本トラックで完成となったんだ。」とエディ・クレイマーは『At Last … the Beginning: The Making of Electric Ladyland』の中で回想している。友人の気分を損ねたくなかったヘンドリックスは代わりにジョーンズにパーカッションを依頼した。イントロ中に何度かカチャカチャいっているのはジョーンズがヴィブラスラップを叩いている音である。

4. ボブ・ディランはヘンドリックス版「ウォッチタワー」は彼のオリジナルの改良版だと思っていた

1969年のローリングストーン誌のインタビューで「俺はディランが大好きなんだ。」とヘンドリックスは興奮気味に語った。「彼には3年ぐらい前にマクドゥーガル通りにあるケトル・オブ・フィッシュ(ニューヨークのフォークロック系バー)で1度だけ会ったことがある。俺がイギリスに行く前だ。その時は2人ともめちゃくちゃ酔っぱらっていたからたぶん彼は覚えていないと思うけどね。」

1970年に亡くなるまでにヘンドリックスは「ライク・ア・ローリング・ストーン」「窓からはいだせ」「漂流者の逃亡」などディランの曲を複数カヴァーしたが、見事に昇華させた「ウォッチタワー」は彼のシンガーソングライター、ボブ・ディランへ対する究極のトリビュートだったのである。ディラン自身もたびたび『エレクトリック・レディランド』バージョンを絶賛しており、自身のライブ演奏でヘンドリックスのアレンジを取り入れるほどであった。「圧倒されたよ、本当に。」1985年のフォート・ローダーデール・サン・センチネル紙のインタビューでヘンドリックスのこの曲の解釈の仕方について質問された時、彼はそう答えた。「彼はとんでもない才能を持っていて曲の中に秘められているものを見つけ出しそれをさらに生き生きと伸ばすことができる。他の人がそこに存在しているなんて思いもしないものを見つけ出すことができるんだ。彼は独自の世界感でこの曲をより良いものにしたんだろう。実は俺は彼のアレンジを取り入れて今日までこの曲をやってきている。」

Translated by Takayuki Matsumoto

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