『ボヘミアン・ラプソディ』『クリード2』...RS誌が選ぶ11月全米公開の注目映画

『グリーン・ブック』 (2018年11月21日より全米公開、日本では2019年3月公開)



『ドライビングMissデイジー』のジェンダーと人種の力関係をいじくりまわせば、寛容さの新しい寓話であるピーター・ファレリー監督の新作がどんなものか想像できるだろう。洗練されたジャズピアニストのドン・シャーリーを演じるのはマハーシャラ・アリ。1962年、ビゴ・モーテンセン演じるブロンクス出身のトニー・リップがシャーリーの用心棒として、まだ人種差別が色濃く残る米国の南部州を巡るコンサートツアーに同行する。人種と階級という緊張状態にも関わらず、二人は互いを尊重し合い、世界の見方を変えてしまうほどの友情を深める。ヒット間違いなしの良作だ。

『ビール・ストリートに口あらば』(2018年11月30日より全米公開)



『ムーンライト』で全米とアカデミー賞を席巻したバリー・ジェンキンス監督が妥協に屈した社会にはピュアすぎる、繊細なラブストーリーとともに戻ってきた。1974年に発表されたジェームズ・ボールドゥインの感動的な小説を題材にした本作では、人種差別的で不当な強姦の罪で離れ離れにならなければいけない、ティッシュ(キキ・レイン)とフォニー(ステファン・ジェームス)という、出産を控えた若い恋人たちにロマンチックな物語が託されている。レインとジェームスという素晴らしい才能が発掘できただけでなく、根気強く正義を求めるティッシュの母を演じるレジーナ・キングの存在感も際立っている。ジェンキンスが現代最高の映画監督の一人であることにまだ疑いを持っている人には、ぜひ観てもらいたい作品だ。

『Overlord(原題)』 (2018年11月9日より全米公開)



ナチスが支配していた電波塔を解体し、基地に持ち帰る。ボイス一等兵(ジョバン・アデポ)と仲間にとってはおなじみの作戦のはずだった。想定外だったのは、湿気に満ちた地下の研究所にうめき声をあげる異形の被験者と光る液体を含む注射針が転がっていたこと。J・J・エイブラムス監督率いるバッド・ロボット・プロダクションはトレードマークとも呼べる秘密のベールを第二次世界大戦時代のSF的な悪夢を描いたB級映画への逆行という形で表現した。ジョン・マガロとワイアット・ラッセルを含む連合軍の戦隊がドイツ軍をあるユニークな方法で強化しようと企んだ、第三帝国の策略に遭遇する。『ゲーム・オブ・スローンズ』のスター俳優ピルウ・アスベックが極悪なナチス親衛隊員として参加し、違う歴史を描いた気味の悪い本作にはぴったりの存在感を放っている。

『サスペリア』 (2019年1月より日本全国公開)



『君の名前で僕を呼んで』の大成功よって映画製作における完全な自由を獲得したルカ・グァダニーノ監督は、1977年のダリオ・アルジェント監督の名作ホラーを、ベルリンの格式高いダンスアカデミーに留学した米国人バレエダンサー(ダコタ・ジョンソン)を主人公にしてリメイクするという、思い切った舵取りをした。右も左もわからないジョンソンだが、マダム・ブラン(ティルダ・スィントン)をはじめとする指導者が教える原始的で深い意味がありそうなダンスの動きには、暗い意図が潜んでいるようだ。政治的かつ女性的なもの、さらにはグロテスクで神聖なものが一つに混ざり合って奇妙にも恐ろしい世界が姿を表す。

『妻たちの落とし前』 (2018年11月16日より全米公開)



『それでも夜は明ける』で監督を務めたスティーブ・マックイーンが、武装強盗が登場するスリラー、政治的陰謀、巧みなキャラクター描写を見事に融合した大作を携えて帰ってきた。手に汗握るオープニングでは、強盗に失敗して命を落とす4人の男たちと、彼らが残した莫大な費用を背負うことになった妻たちが描かれる。略奪品を催促するギャング(ブライアン・タイリー・ヘンリーとダニエル・カルーヤ)をなんとかして黙らせようと、強盗グループのリーダーの妻ベロニカ(ビオラ・デイビス)は未亡人仲間のアリス(エリザベス・デビッキ)とリンダ(ミシェル・ドロリゲス)を集めて犯罪者たちへの復讐を誓う。ジェットコースターのようなツイストやターンがあったり、ブロードウェイ歌手シンシア・エリボが逃がし屋役を演じたりと、超一流のキャストたちの最高の演技が光る作品だ。

Translated by Shoko Natori

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