King Gnu常田大希が「憧れの気持ち」を抱く14冊

King Gnuの常田大希(「Rolling Stone Japan vol.04」より:Photo by Masato Moriyama)

アーティストの世界観を構成する「本と音楽」の関係にフォーカスをあてるこのコーナー。今回登場するのは、King Gnuの首謀者である常田大希。

クリエイティブ集団「PERIMETRON」も主宰する常田は、音楽だけでなくアート・写真・文学など、あらゆるジャンルの創作物から刺激と発想を得ている。今回「好きな本」「影響を受けた本」として挙げてくれた14冊には、どれも憧れの眼差しを向けているという。常田が憧れる表現、そして、理想とする東京の都市としてのあり方とはー芸術を追求しながらも、売れることと熱狂の渦を生むことを絶対に諦めない常田の姿勢を探った。

※この記事は9月25日発売の『Rolling Stone JAPAN vol.04』に掲載されたものです。

ー「好きな本」「影響を受けた本」をテーマに、14冊挙げていただきました。

常田:意図的に、ジャンルや系統は散らしてみました。今回選んだのは、憧れの気持ちがあるものが多いですね。

1:『音楽』 小澤征爾×武満徹
2:『芸術起業論』 村上隆
3:『POLLOCK』 Leonhard Emmerling
4:『Act Of Love : A Visual Dictionary Of Animal Courtship』
5:『ソール・ライターのすべて』 Saul Leiter
6:『ヒプノシス・アーカイヴズ』 Aubrey Powell
7:『アーブル美術館 大贋作展』 アーブル美術館
8:『TOILETPAPER』 雑誌
9:『希望の国のエクソダス』 村上龍
10:『砂の女』 安部公房
11:『恐るべき子供たち』 Jean Cocteau 
12:『Millennium』 Stieg Larsson
13:『七色いんこ』 手塚治虫
14:『Monster』 浦沢直樹

ーまず最初に、小澤征爾×武満徹『音楽』を挙げられていますね。

常田:18歳の頃から2年ほど、小澤さんが主宰する若手のオーケストラ楽団にチェロ奏者として所属していて、武満さんの曲も演奏していました。小澤さんは、とにかくすごかったんです。指揮者って、リハーサルではディレクションをするのが主な役割ですけど、本番では、表情を引き出してオーケストラの音を持っていくとか、アティテュードの部分が大きくて。小澤さんは、表情ひとつで空気を支配するんです。その場を一気に張り詰めた感じにさせる。でも、そんな小澤さんと武満さんのフランクで軽快な対談を楽しめるのがこの本。意外と、誰が読んでも楽しめるんじゃないかなと思います。小澤さん、他にもいくつか本を出しているんですけど、面白い方なんですよ。

ー小澤さんの楽団にいたなかで、特に印象深かった経験は?

常田:アジアツアーを回るような活動をしていたんですけど、中国のオーディエンスがかなり生き生きとしていて、熱を帯びた感じだったことは、特に印象に残っていますね。オーケストラの演奏会なのに歓声を上げたり、写真もパシャパシャ撮っていたり、日本と全然違うものを目の当たりしました。

ー村上隆『芸術起業論』は、芸術とビジネスの関係について説いた一冊ですが、常田さんはどう受け取りましたか?

常田:芸術とビジネスって、相反する感じがありますよね。でも、芸術と金というのは、どうしたって切っても切り離せないもので。僕は東京藝術大学に通っていたんですけど、アカデミックな場では、芸術と社会の結びつきが重要視されていないし、教えてもくれないように思うんです。でも、芸術と社会って、結局は結びつかないといけない。この本に書かれていることすべてに賛同するわけではないけれど、すごく大事なことを言っているなと思いました。

ーKing Gnuとしても、芸術的な表現は妥協しないまま、ビジネスとしても成功を得たいという気持ちがある?

常田:日本で、音楽で金を稼ごうと思ったらJ-POPになっちゃうじゃないですか。でも、それだと面白くないから、King GnuはJ-POPと他のジャンルの橋渡しのようになれたらいいなと思いながら意識的にやっています。まあ、でも、そのバランスは難しいです。ポップアートをやっているアーティストが一番頭狂いやすくて病んじゃうらしいんですけど、その気持ちはすごく分かりますね。振り切っちゃったほうが、絶対に楽ではあるんですよ。

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